大坂選手の外見を揶揄した『今夜くらべてみました』(番組HPより)
お笑いコンビ・Aマッソによる大坂なおみ選手に対する差別発言が大問題となっている。
Aマッソは村上愛と加納愛子が結成したコンビだが、22日に参加したイベントで披露したネタのなかで、村上が投げた「大坂なおみに必要なものは?」という振りに対して、加納が「漂白剤。あの人日焼けしすぎやろ」と返したという。
ハイチ系アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれた大坂選手のルーツをあげつらう許しがたい差別発言は、イベントを見ていた人がSNSに怒りを投稿したことでどんどん拡散していき、炎上状態となった。さらに、海外にも飛び火。イギリス・BBCまでがAマッソの差別発言をネットニュースで取り上げる事態となった。
こうした背景には、Aマッソの所属するワタナベエンターテインメントの曖昧で不十分な対応がある。同事務所は公式ホームページを通じて謝罪文を出したのだが、その内容は〈特定の方のお名前を挙げて、ダイバーシティについて配慮を欠く発言を行った件につきまして、お名前を挙げてしまったご本人、思い出野郎Aチームの皆様、当日ライブを鑑賞していらっしゃったお客様、本件について不快な思いを感じた皆様、関係各位に多大なるご迷惑をお掛けしましたことを、深くお詫び申し上げます〉という、この件についてよく知らない人にはなんの謝罪なのかまったくわからない非常に曖昧なものだった。
言うまでもないがAマッソの発言は〈ダイバーシティについて配慮を欠く発言〉程度の言及で済むものではない。所属事務所はこの発言が、肌の色を揶揄した許されざる差別発言であったことをきちんと明示し、そのうえで謝罪するべきだろう。これでは、真摯な反省をしているとはまったく思えない。
実際、前述したイギリス・BBCも〈Aマッソの二人は「不適正で、傷つける表現」をしたことを謝罪したが、二度グランドスラムを制したハイチ系日本人である大坂選手の名前は挙げなかった〉(編集部訳)と、謝罪や反省の不備を指摘している。
しかし、こうした差別的なお笑いへの無自覚性は、Aマッソや所属事務所の問題だけではない。日本の芸能界、さらにはテレビ全体に共通するものだ。
実は、大坂選手に対する差別発言が炎上している最中、地上波のテレビ番組でも大坂選手の外見を揶揄する芸が堂々と放送されていた。
9月25日放送『今夜くらべてみました』(日本テレビ)でのこと。この日の番組では、「一瞬だと似てる! 3秒くらいものまね」と題して、ものまねタレントが一発芸的なものまねネタを披露するコーナーがあった。そのなかで、坂本冬休みが「疲れすぎた大坂なおみ」というテーマでものまねを披露したのだが、これが酷いものだったのだ。
可動式ステージに乗ってスタジオに登場した坂本冬休みは、メイクで顔や体を部分的に黒く塗り、唇を分厚くさせていた。そして、拙い日本語の発音で「ちょっと疲れた〜」と一言を発する。そして、そのままスタジオを去って行った。
これは明らかに大坂選手のハイチと日本のハーフという属性をあげつらう差別ギャグだ。坂本冬休みは肌を全部真っ黒にしていたわけではないが、メイクで唇を分厚くした上に突き出し強調したことなどは、明らかにアフリカ系をカリカチュアする際の典型的な蔑視表現だし、わざと拙い日本語で喋っているところなども、ハーフへの蔑視が含まれている。そういう意味では、『今夜くらべてみました』が流したのはいわゆる「ブラックフェイス」に類する差別ネタだと言ってもいいだろう。