小学館「コロコロコミック」2018年3月号
小学館の少年漫画誌「コロコロコミック」2018年3月号(2月15日発売)の“チンギス・ハーン落書き問題”。6日、小学館はとうとう発売中止を発表した。
念のため振り返っておくと、問題になったのは、同誌で連載されているギャグマンガ「やりすぎ!!! イタズラくん」(吉野あすみ)の描写の一部。モンゴル帝国の初代皇帝であるチンギス・ハーンの肖像画を見た作中のキャラクターが「チ( )・( )ン」という空欄を穴埋めする形式で人物名を答えようとするのだが、「チ(ン)・(チ)ン」と書いた上で、肖像画の額に男性器の落書きをしたというものだ。
これに対し、モンゴル出身の元横綱・朝青龍がTwitterで2月22日、〈なー言いとけどなー!! 先祖バカにするお前ら!! 品格がない日本人!! 許せない!! 謝れ!! 謝れ!! 謝れ!! どこのゴミの会社!?〉などと投稿・抗議して大きな話題に。駐日モンゴル大使館も同23日、臨時代理大使名でFacebookに抗議文を発表した。
小学館は同日、公式サイトで〈モンゴルの英雄であるチンギス・ハーンに関する不適切な表現があったことにより、モンゴル国国民の皆様をはじめチンギス・ハーンを敬愛する全ての方々にご不快の念を抱かせましたことを、深くお詫び申しあげます〉〈今後はかかる事態を起こさないよう、モンゴルの歴史・文化に関する知見を深め、一層の配慮をして参る所存です〉などとする謝罪文を掲載した。
また、先月末には在日モンゴル人らが東京都の小学館前で抗議デモを行うなどし、書店で自主的に販売しない動きが出始めた。そして3月6日、小学館が「コロコロコミック」3月号を発売中止にすると発表するに至った。
いかにも小学生向けの漫画雑誌らしい下ネタ描写が抗議を受け、版元が発売中止まで決定した今回の騒動。たしかに、モンゴルではチンギス・ハーンは英雄視されており、その歴史的人物の肖像に男性器を描いた表現は、モンゴルの歴史や文化を罵倒していると受け止められても仕方がない。無論、こうした表現に対して抗議をする行為自体も正当である。
他方で、ネット上では「版元が販売中止にするほどのものなのか」という疑問の声も少なくない。実際、歴史的人物の顔に落書きをするというのは、古今東西で用いられてきたパロディの手法だ。もし、これが名誉毀損裁判ならば、作中のギャグ表現が「表現の自由」の範疇であるかが争点の一つになるだろう。
しかし、今回の一件で最大の問題は、「表現の自由」ではなく、版元の小学館が見せたダブルスタンダードのほうだろう。というのも小学館は“チンギス・ハーン落書き問題”では販売中止という異例の措置をとった一方、これまで数々の中国・韓国に対するヘイト本を出版し、差別の扇動を垂れ流してきたからだ。