『クローズアップ現代+』公式HPより
昨年は、『君の名は。』や『この世界の片隅に』など、ここ数年でも稀に見る大ヒットアニメ作品が立て続けに生み出された年だった。アニメは市場規模が右肩上がりに上がっている産業だが、上述のようなヒット作の影響もあり、昨年のアニメ業界の市場規模はついに2兆円に到達すると見られている。
しかし、景気がいいのは一部だけ。今月7日に放送された『クローズアップ現代+』(NHK)は、好況に沸くアニメ業界のなかで厳しい生活を強いられているアニメーターたちを特集。話題を呼んだ。
現場で作品づくりの最前線に立つアニメーターたちの苦境については巷間言われ尽くしている感もあるが、改めて聞くとその厳しさはやはりすさまじい。
番組では、25歳の若手アニメーターの生活にフォーカス。彼の年収はアルバイトも含めてわずか100万円たらず。月2万5000円の寮でなんとかギリギリ生活を保っている状況がカメラに映し出されていた。しかし、これは特殊な事例でもなんでもなく、アニメーターとしてはごくごく平均的なもの。動画担当のアニメーターの平均年収は111万円しかなく、彼が抱えている問題はアニメーターたち皆が抱えている問題でもある。
先日、スタジオジブリが出した制作スタッフの募集要項の給与が「月額20万円以上」、賞与は「年2回」となっていたのに対し、海外から「あまりに待遇が悪い」との声が寄せられた件が話題となっていたが、以上のような状況を考えると、日本国内のアニメ制作会社の水準では、スタジオジブリはむしろ破格の待遇であることがよくわかる(しかも、この募集は経験不問でなおかつ6カ月の研修期間の後に現場に配属される新人スタッフ。そのことを考えると、ジブリの給与は一般企業の普通の大学新卒者と比較しても格段に悪いわけではない)。
また、厳しいのは給与だけではない。アニメーターの約4割はフリーランスで、正社員率は15%。長時間労働も深刻で、調査によると、労働時間は1日平均11時間、休日も月4日にとどまっているという。
前述した若手アニメーターは、このように複雑な胸の内をカメラの前で明かしていた。
「好きでこの業界にいるのは間違いないです。僕は選んで間違いなくこの業界にいます。ここで頑張っていこうとも思っているんですけども、アニメーターのなかで結婚できてる人って上位2割なんですよね。何かを諦めなければ、何かを捧げなければ(この業界にはいられない)というんですかね……」
アニメ業界自体は好況なのにも関わらず、なぜ現場のアニメーターたちはこんなに苦しい生活を強いられるのか。番組では、その原因のひとつを「製作委員会方式」に見る。