利益も資金も製作委員会が独占、現場には降りて来ない
周知の通り、作品づくりに多額の費用が必要なアニメ作品では、テレビ局や出版社など複数の企業が出資して製作委員会をつくることが多い。この製作委員会からアニメ制作会社に作品づくりが委託され、そこからさらに、下請けの会社やフリーのアニメーターへと仕事が発注されていく。
しかし、作品の版権や、関連商品などの権利は製作委員会に出資した企業のもので、下請けの人々には、そういった利益は還元されない。そのため、どれだけ作品がヒットしても、それにともなって下請けの懐が潤うことはないのだ。番組によると、そういった仕組みが原因で、制作会社や下請け会社の4分の1が赤字経営であると説明していた。
このシステムに関しては、以前より、ある大物アニメ監督も問題を訴えている。
その監督とは、『シン・ゴジラ』や『新世紀エヴァンゲリオン』で知られる庵野秀明監督。彼は、2006年にアニメ制作会社・カラーを設立し、この会社で映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズなどの制作を行っている。彼は、会社をつくった当初から、長時間労働かつ薄給であったり、保険すらきちんとしていなかったりというアニメ業界の労働問題に取り組んでいることはよく知られているが、そんな庵野監督は「週刊新潮」(新潮社)2016年11月24日号のインタビューでこのように語っていた。
〈アニメ制作現場で賃金がやすいのは、ひとつは利益を還元するシステムがほとんどないからだと思います。僕はそれを作りたいと思っていますが、既存のシステムを変えるのは簡単ではありません〉
〈映画やテレビの制作システムだと、出資者以外は儲からないんです。出資のリスクを負う以上、儲かったときの利益も総取りなんですね。たとえば、映画で興行収入がいくらになろうとも、監督のギャラは制作時のものだけで、成功報酬はなにもありません。ソフト化の際に印税が一定の割合で支払われる程度です〉