電通側は、大嶋さんの死亡直後には副社長名で「失恋説」を記した文書を回してもいたという。
だが、そんな主張は認められるはずもなく1996年の一審判決では、電通の過失が100パーセント認められ、両親に対し1億2600万円という史上最高額の賠償支払を命じられた。電通はその後控訴し最高裁で審理が行われ、2000年、最終的に1億6300万円で和解が成立している。
この判決は日本で初めて過労自殺について会社の責任が全面的に認められたものであり、その後の過労自殺訴訟、労災認定に大きな影響を与えたものだ。
しかし、それから15年、電通は今回、再び同じような社員の過労自殺を引き起こしたのだ。
これは、けっしてたまたまではない。電通では最高裁判決が出た2000年以降、社員の出退勤時間の管理を徹底するようになったとされるが、それは名目上のものにすぎなかった。
実際、高橋さんの代理人弁護士が会見で「労働基準監督署に届け出た時間外労働の上限を超えないよう、勤務状況報告書を作成するよう社員に通達していた」とその実態を指摘している。
また、この間、表沙汰にはなっていないが、数多くのセクハラやパワハラ、深夜に渡る不条理な飲み会、長時間労働などの問題行為を続けていた。精神疾患で長期療養を余儀なくされる社員もあとを絶たなかった。
しかし、電通はこうした事実を隠し、電通批判をタブー視するマスコミもそうした問題を一切追及してこなかった。そういう意味では、高橋さんの過労自殺は起こるべくして起きたともいえるのである。
それでも、電通は何の反省もなく、相変わらずの隠蔽体質を維持したままだ。今後、大嶋さんや高橋さんのような犠牲者を出さないためにも、不都合なことをすべて隠蔽する電通の“ブラック体質”のさらなる検証が必要だろう。
(伊勢崎馨)
最終更新:2017.11.24 07:26