ただ、そんな昨今でも、なかなか衝撃的なのが、桜井あゆのエピソードだ。ウェブサイト「幻冬舎plus」の連載「親公認AV女優 裸になる娘とその親たち」で、桜井あゆはこのように語っている(サイトでは「桃乃遥香」という仮名でのインタビューとなっているが、後に本人がツイッターで自分のことであると告白している)。
「AVは親も地元の友達もみんな知ってます。デビューのときから『あたし、AV女優になったんだ』って自分から言いました。同い年の友達からしたら『俺の友達AV女優なんだぜ!』って恰好の話のネタじゃないですか、あはは。デビュー作は口コミでも有名になっていたみたいで売り上げは良かったみたい」
「(AVに)出るだけじゃ親にはバレないけど、雑誌とかに出ちゃったら絶対にバレると思った。なのでデビュー1ヶ月くらいして週刊誌でのグラビアの仕事が入ったとき、撮影が終わったその日のうちにお母さんに電話で言いました。反応は『あ、そう』って(笑)。『あんたが死ぬこと以外、なにも驚かないよ、どうせ私たちが止めたところであんたはやるでしょ。だったらやればいい。ただ体には気をつけなさいね。やりたいところまでやってみなさい』ってLINEがきました。さすがにそれは驚いたけど私も『絶対に恥ずかしくないくらい有名になるから』って伝えましたね」
ここまで女優たちの親バレエピソードを見てきたが、当然のことながらAVは女優だけでつくっているわけではない。男優もいれば監督もいる。そういったAV業界の男たちは、身内バレに関してどのような葛藤を抱えているのだろうか。
日本一の難関校、筑波大学付属駒場中学・高等学校出身という、これまた異色の経歴をもつAV男優の森林原人が親バレしたのは、大学時代、AVの仕事ばかりで学校にほとんど行かなくなってしまったのが原因だった。
「AVの仕事を始めてから2年が経った頃に、大学から「履修届けが出てない」っていう連絡が母親に入っちゃって。当時、僕は実家からの通学だったのですが、母親から「あんた大学に行くっていって、どこに行ってるの? 今日は何時まででも待ってるから、話をしましょう。待ってるから」って留守電に入ってたんです。ちなみにそれ、母の日だったんですけど」
「いざ両親と対面して、どう説明しようか悩んでいると、向こうから「どんな宗教団体に入ったんだ?」って。AVやってるなんて頭の中にはなかったんでしょうね。「AV男優やってるんだ」って正直に告白したら、しばらくの沈黙の後、父親が「そんなことをさせるために今まで育ててきたんじゃない」って」(鈴木おさむ『AV男優の流儀』扶桑社)
結局その後も表立ってAV男優という仕事を認めてくれることはなかったと言うが、そんな自分の仕事のことを少し理解してくれているのかもしれないと思わせるエピソードがあった。それは以前付き合っていた彼女と結婚の話が出たときのこと。彼女に「私と結婚したいならAV男優を辞めてくれ」と言われ、そのことを相談すると、親は厳しくこう言った。
「あんた10年も続けたんだからプライドを持ちなさい」