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“アイドル”刺傷事件は警察のずさんな対応に責任あり! 目くらまし「ファンとの距離の近さ」議論に騙されるな

 もしも岩埼容疑者の状況を警察が確認し注意喚起などを行っていれば、このような痛ましい事態には発展しなかった可能性が高く、今回の事件はどこからどう見ても、事態を軽く考えていた警察側の怠慢により起きてしまったものと言える。

 しかし、そのような警察対応への批判の声がメディアにはあまり出てこず、むしろ、「『アイドルファン』と『アイドル』の近すぎる関係性の是非」といった別の議論に収斂されている。フジテレビ『直撃LIVE!グッディ』にいたっては、被害者となんの関係もないアイドルグループの過剰なCD特典商法をあげつらっていた。そこには、意図的な情報誘導があると夕刊紙記者が語る。

「報道では冨田さんが『アイドル』ということになっていますが、実際は『シンガーソングライター』で、『アイドル』じゃない。本人もそう自称してますし、ファンもそういう認識でした。過去に、元アイドリング!!!の朝日奈央や伊藤祐奈らとともにシークレットガールズという企画ものアイドルユニットを組んでいた時期があることから、『アイドル』という経歴が押し出されている。これはもちろん、我々マスコミが視聴者、読者受けを狙っているというのもありますが、もう一つは、警察自ら冨田さんがアイドルをやっていた時の情報を中心にメディアに流しているからです。警察側としては、ストーカー対策の不手際からメディアの目をそらさせたい。だから、『アイドル』時代の情報をどんどんメディアに流して、AKBの刺傷事件の時にも盛んに交わされた『アイドルとファンの近すぎる距離感』という方向に議論をもっていこうとしているのではないでしょうか」

 2000年にストーカー規制法が施行されてから、警察によるストーカーの認知件数は年々増え続け、いまや年間2万件にもおよぶ。だが、小早川明子『「ストーカー」は何を考えているか』(新潮社)によれば、警察が警告を出した事例は、そのうちのわずか1割にとどまっているという。冨田さんのように相談に行ったのにも関わらず放置され、事態が悪化していくケースは山とあり、今回の事件が氷山の一角なのは間違いない。ストーカー規制法と、警察がその法律をどう捜査に役立てていくのかを議論しなければ、そう遠くない未来、同じような事件が起こる。「アイドル」と「ファン」の関係なんていうテーマで議論している場合ではない。
(新田 樹)

最終更新:2016.05.24 11:18

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