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川崎の老人ホーム殺人事件は氷山の一角だ! 相次ぐ虐待、“刑務所”なみの高齢者住宅…最大の問題は行政の不作為

 もう1人、茨城県の浩さん(78歳)が入居したサービス付き高齢者向け住宅は、人間の自由と尊厳を奪われるまさに“監禁場所”“刑務所”のような場所だったという。

「携帯電話の持ち込みが禁止されており、公衆電話もない。職員がいる事務室の電話を借りることはできるものの、話の内容が筒抜けになってしまうので親族と内緒話もできない。たまらなくなって逃げ出そうとまで考えたらしいが、所持金がないため諦めたという」

 外出は禁止され、毎日部屋からデイサービスのある1階に移動するだけ。風邪を引いても放置される。また本人宛の荷物も職員に中身を調べられる。冷蔵庫や飲食物、そして金銭の持ち込みもすべて禁止だ。

 外出も禁止され、連絡手段も断たれれば、事業者から虐待などを受けても外部や行政に苦情も言えない状況に追い込まれていく。これは直接的暴力ではないが心理的虐待であり、人権侵害だ。

「介護業界は慢性的な人手不足が続いているにもかかわらず、あまりに急激にサービス付き高齢者向け住宅が増えたために、介護職はまともに教育を受けないまま即戦力として現場に出ます。管理職も育ちにくい。(略)受け皿だけが増えて、教育が追い付いていないのが現状です」

 さらに絶望的なのは、しかしこうした介護ビジネスに“不正”に対し指導する立場の行政の対応だ。著者は複数の行政に取材しているのだが、しかしまともに取り合ってもらえないことが本書では描かれている。

 そのひとつが胃ろうを専門に受け入れる岐阜県の「胃ろうアパート」のケースだ。ここでは高齢者を1日中ベッドに寝かせきりにし、排泄はオムツに垂れ流し。ポータブルトイレも置かれていない、予定された時間になってもヘルパーや看護師が来ないなど架空請求の疑いがあった。関係者が相談や通報をするも、相手にさえされなかったという。そこで著者自身が取材を敢行するのだが、こんな対応が待ち受けていた。

「筆者の取材に対しても、岐阜県高齢福祉課の担当者は煮え切らない態度を見せるばかりで、挙げ句面倒になったのか、間もなく定年を迎える職員に途中で担当を交代。その担当者ものらりくらりとこちらの追求をかわすばかりで、不毛なやりとりが繰り返された」

 関係者が改善指導を要請しても、現地に出向かないばかりか何ら指導さえしていないことも多いという。まさに公務員の不作為の代表のようだが、これが介護ビジネスをめぐるひとつの現実だ。もちろん良心的事業者もあるだろうが、弱者を食い物にしようとする悪徳業者もまた数多く跋扈している。厚生労働省によると13年度の虐待に関する通報、相談は962件に上り、うち221件が虐待と認定されているのだ。

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