トライストーン・エンタテイメントHPより
金曜22時から放送中のTBSドラマ『コウノドリ』に出演中の綾野剛。綾野にとってはドラマ単独初主演、しかも産科医でありながら天才ピアニストでもあるという不思議な役どころで、視聴者からは「話は感動的なのにピアニスト人格の金髪ヅラが笑えて困る」と話題に。カツラ姿を除いて評判は上々のようだ。
昨年公開された初主演映画『そこのみにて光輝く』(監督/呉美保)は、モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞を受賞したほか、『キネマ旬報』ベスト・テンで第1位に選ばれ、綾野は主演男優賞を獲得。さらに今年は『新宿スワン』(監督/園子温)もヒットし、着実に主演俳優へと成長しつつある綾野。だが、じつはその裏側では、さまざまな懸念もあったらしい。
「綾野剛は果たして映画一本背負える役者なのかと、プロデューサーとして非常に悩んでいたんですよ」
「『そこのみにて光輝く』で映画賞を山ほど獲ったけれど、今後の綾野剛をどうするかということについて簡単な結論は出せない」
このように語っているのは、『新宿スワン』のプロデューサーであり、“日本映画界の怪人”とも評される山本又一朗氏。山本氏は現在発売中の「文學界」(文藝春秋)にて、綾野を主演に抜擢したいきさつを明かしている。
「最初は『新宿スワン』にいきなり綾野を使うのは作品にとっても、綾野自身にとってもリスクがあると考えていたんです。誰がいいだろうか、他に誰かいないかと思い悩んでいた」(山本氏)
じつは山本氏、綾野が所属する芸能プロダクション、トライストーン・エンタテイメントの社長でもある。キャスティングに悩み、山本が『新宿スワン』の原作者である和久井健氏らと打ち合わせの会食をしていたところ、ちょうど綾野が山本氏に電話をかけてきた。「打ち合わせ中だ」と山本氏が伝えると、綾野は「ああ、そうですか」と残念そうな返事。そこで綾野をその場に呼ぶことになったのだが、綾野が入ってくるなり和久井氏が「居るじゃないですか、(主役の)白鳥龍彦が!」といい、綾野も「社長、白鳥やりたいです」と身を乗り出したというのだ。
役者には演技力だけでなく、運やタイミングも求められるのだろう。実際、綾野が山本氏率いる現在の事務所に所属したのは、小栗旬主演の『クローズZEROⅡ』(2009年/三池崇史監督)に出演したことがきっかけだった。