『2020年マンション大崩壊』(文春新書)
神奈川県横浜市の大型マンションが傾いた問題は、販売元が超大手の三井不動産だったこともあり、マンションの安全神話を根本から揺るがせている。
だが、マンションが抱えるリスクは、こうした建築上の安全性だけではない。東京五輪後に、ほとんどのマンションがスラム化してしまうのではないかという懸念が高まっているのだ。
「どうやら東京五輪のフィナーレは空き家問題暴発のセンセーショナルな号砲になりそうです」というのは『2020年マンション大崩壊』(牧野知弘/文春新書)だ。
すでに、空き家問題の暴発リスクは高まっている。総務省が5年に1度調査する「住宅・土地統計調査」によれば、日本全国の空き家数は2013年時点で820万戸。国内住宅総数6063万戸に対する比率、空き家率は13.5%に及んでいる。
野村総合研究所の調査によれば、地方の高齢化と人口減少により、空き家が急増。2018年には日本の空き家は1000万戸を超え、2023年には空き家数は1396万戸、空き家率は21.0%となり、日本の住宅の5軒に1軒が空き家になりかねないとしているのだ。
「実際に東京都では空き家率こそ10.9%ですが、空き家の実数は約81万7000戸におよび、この数は圧倒的に全国1位です。神奈川県が48万7000戸、千葉県や埼玉県でも35万戸以上を数えます」「東京都に次ぐ空き家数となるのが大阪府です。大阪府は空き家数が67万9000戸、空き家率は14.8%と全国の平均値を大きく上回っています」(同書より)
それでも、供給は止まらない。都会の賃貸用のマンションは「相続税対策として賃貸用のマンションを購入する、借入金を調達することでアパートを建設するなどして相続税評価を圧縮する動き」から、賃貸住宅の着工数は増加している。