これほどまでに安倍首相が「明治日本の産業革命遺産」にこだわったのは、戦前の大日本帝国の体制や「富国強兵」「脱亜入欧」という思想を肯定・美化したかったからだというのは簡単に想像がつく。国民に愛国心を強制することに熱心な安倍首相の次の目標……それが「特攻隊資料を世界記憶遺産登録」なのだろう。
ほとほと嫌気がさすが、「FACTA」の記事ではもうひとつ、気になる話が記載されている。それは、この世界記憶遺産の文部科学省の担当者が、籾井勝人・NHK会長の娘である籾井圭子氏であるということだ。
言うまでもなく、籾井氏は安倍首相の完全な子飼いで、籾井体制以降、NHKは“安倍チャンネル”と化していることはご存じの通り。今度は娘が安倍首相の希望を忖度して、特攻隊資料の世界記憶遺産登録に動いたということか──。
それにしても、安倍首相はユネスコの世界記憶遺産を国威発揚の場か何かと勘違いしているのではないか。
今回の「南京大虐殺」に限らず、これまでも世界記憶遺産は帝国主義や戦争による“負の歴史”をいくつも認定してきた。それは、そうした歴史を踏まえることなくして平和への前進はなしえないからだ。しかし、この日本という国は、安倍首相の主導によって特攻隊の賛美という“逆コース”を進もうとしている。いったいこの姿勢のどこが“積極的平和主義”なのか。国家の身勝手なエゴを全世界に発信し続けているだけではないか。
まあ、国連の会見で難民問題を問われて、「難民問題より前に女性、高齢者の活躍」とトンチンカンな答えをするようなドメスティックなオツムの持ち主には何を言っても無駄だろう。
やはり、諸外国から「話にならない歴史修正国家」と見放され、国際社会から孤立する前に、この政権を倒すしかない。
(宮島みつや)
最終更新:2015.10.13 10:32