〈では、「つんく♂は癌になって考え方が変わったから、ハロー!プロジェクトのプロデュースをやめたのか」と聞かれれば、答えはNOだ。
実は、2013年の秋くらいからシャ乱Qの育ての親でもあり、ハロー!プロジェクトのメンバーたちが所属するアップフロントグループの会長から、そろそろハロー!プロジェクトの総合プロデューサーを降りたらどうか、と提案されていたのがきっかけである。
僕としてはまだまだ続ける気も、展望も大アリだったし、モーニング娘。も方向転換したばかりだったので、もっと形にしたかったけど、会長曰く「ここらへんでちょっと休養を取ったほうがいいだろう。喉の調子も良くなさそうだし」と。
その時は驚いて、僕なりの今後の展望や今後のハロプロ論を伝えたし、いろいろ話し合ったが、結果ハロー!プロジェクトの総合プロデューサーを退き、作詞・作曲に関しては一作家として参加し、ことモーニング娘。に関してはサウンドプロデューサーとしては携わることとなった〉
山崎会長は何故いきなりつんく♂のハロプロ卒業を言い出したのだろうか。関係者はこんな驚きの理由を語る。
「今回の“つんく♂ハロプロ卒業”は、彼の健康が理由ではありません。本当の理由は、つんく♂が代表取締役を務めるアップフロントのグループ会社・TNX株式会社の赤字問題です。この会社は音楽制作以外にも、お好み焼き屋・靴下や化粧品のブランド立ち上げ・アイドルカフェといった無軌道な多角経営をしており、それらの垂れ流す赤字にとうとう山崎会長の堪忍袋の緒が切れたみたいですね」(音楽業界関係者)
確かに、13年秋というと、つんく♂プロデュースを謳い下北沢・六本木・新宿に出店していたお好み焼き屋・かりふわ堂が閉店していく時期と符号する。
しかし、これが事実なのだとしたらつんく♂には同情せざるをえない。確かに、TNXの事業には失敗が多かったのかもしれないが、これまでつんく♂がアップフロントグループに対して積み上げてきた貢献に比べればその損失は、決して大きなものではなかったはずだ。楽曲制作の方向性などクリエイティブな問題ならまだしも、一時の金勘定の怒りで長年の功労者の首を切るというのは、いくらなんでも冷酷過ぎないだろうか。
つんく♂の著書『だから、生きる。』の話に戻るが、彼が声帯の摘出手術を受けることになるのは、山崎会長が進退を提言した13年秋から約1年後の14年10月。著書によれば、6時間半にもおよぶ手術の前後につんく♂は病床のなかでこんな作業をしていたと綴っている。
〈総合プロデューサーを降りるにあたって、それまでハロー!プロジェクトの制作工房として機能していた会社を縮小せざるを得なくなった。(中略)会社の業務を縮小するにあたっては、入院中に判断しなきゃいけないこともたくさんあった。身体中にまだチューブが何本も装着され、体力的にもかなりへばった状態でスマホやPCを使ってスタッフと会話したりして、大変な面もたくさんあった〉