工藤會だけではない。10年くらいから日本全国で制定の動きが広がった「暴力団排除条例」(暴排条例)によって、暴力団員の生活基盤が崩壊しているのだ。ご存知の通り、暴排条例は、暴力団員と交際したり、暴力団員に利益を与えたりする一般市民を取り締まるものだ。
「これによってヤクザたちは金融機関の口座や生保、損保などを解約させられ、クレジットカードを持つこともできなくなった。また、ホテルやゴルフ場などの公共の施設が利用できず、事務所に宅配便やラーメンの出前も届かなくなった。あるいは子どもたちが学校や保育園に通えなくなる事態も頻発している」
一般市民であればごく問題なく利用できるサービスも利用できなくなっている現在の暴力団員。それは葬儀においても同様だ。
「現代のヤクザたちは葬式すらまともに出すことができなくなってきているのだ。公共の葬儀場や寺では組織としての葬儀を行えない。施設側が受け入れたとしても警察が黙っていないのだという」
「また、組員だけではなく、その妻子の法要も営めなくなっている例も出てきている。寺には墓もあるのに、妻が亡くなっても葬儀ができなかったというのだ」
そして、社会から排除されていく暴力団員のなかには、自ら死を選択する者も少なくない。
「ヤクザと話しているときに、『困りごと』として親分や兄弟分の自殺を挙げる者も多い。
原因はたいていはカネである。シノギが細くなってにっちもさっちもいかなくなり、思い余って……というパターンである」
「ヤクザの場合、組のために懲役に行き、刑務所から出所したときに帰るべき組がなくなっている場合もある。服役中に知らされてはいるが、寂しい思いを募らせた挙げ句に自殺を選ぶ者は少なくない」
このように暴排条例によって“難民化”している暴力団員とその家族たち。いくら非合法的な行為に手を染めるアウトローたちとはいえ、あまりにも人権が蔑ろにされている状況ではなかろうか。