また、さらにあるときは、「アホ」や「バカ」という言葉の起源が中国にあり、それが日本文化と結びつき、京の流行りことばとして流通したことに辿り着いた松本氏の話に、百田くんは「日本人はずっと『ホ』(阿呆の呆)を求めていたんですよ」と話題を飛躍させて興奮。この主張には松本氏も納得・感心する部分もあったようなのだが、「『アホウ』は、実に響きがいい。音楽的にも美しい」などと言う百田くんの〈異常なまでの「アホウ」の褒めっぷり〉には別の思惑が働いていることを松本氏は察知し、百田くんにこんなツッコミを入れている。
「関西ナショナリズムに酔うてるんと違う?」
フラットな視点から中国と日本の文化の同時代的なつながり、そのすばらしさを語っているのに、結局、“関西、最強”と話をすり替えてしまう。──もしかすると、この「関西ナショナリズム」が、いまの「愛国心」に進化を遂げたのだろうか。ただ、大阪のオッサンが他の土地をディスりながら関西自慢をするのも大概ウザいものだが、「反日」「売国奴」と声を張る現在は、そんなウザさの限界値を遥かに振り切っている。ああ、いまも「アホウって言葉、すてきやん」とだけ主張していてくれたら、たんなる風変わりなオッサンとして愛されたかもしれないのに……。
このように、百田尚樹として認知される以前の“百田くん”とは、会議中に手品の練習をして顰蹙を買ったり、いいかげんな地図をつくって放送にのせちゃったり、勉強もしてないのに持論を炸裂&断言を繰り返したりと、“調子にのったらタチが悪い、困ったオッサンあるある”に数えられるような人物だったのだ。そこから成長もなく、ただ増長し、わずかにあった愛嬌さえ失ってしまった……それが現在の姿なのだろう。
しかし問題は、そんなテキトーなオッサンを重宝して、NHKの経営委員会に呼び込んだり、“文化人”として勉強会に迎えてしまうことのほうだ。安倍首相を筆頭に自民党議員の小物化が進みすぎて、そんな問題にも気付かなくなっているのかもしれないが、いかにもオッサンの類友とは恐ろしいものである。
(大方 草)
最終更新:2015.07.02 07:22