分布図づくりも杜撰だったのに、気分はすっかり専門家。しかも「ほぼ間違いない」とな。『殉愛』でも〈この物語はすべて真実である〉と大見得をきって、その後ボロボロとウソが発覚したが、断言癖は当時からのものだったのか。当然、この百田くんの発言には松本プロデューサーも「すべてが推測から成り立っている」としてやんわり反論しているが、それでも納得しない百田くんは、方言周圏論を「そんなバカなことが!」と批判している。
だが、驚くのはこのあと。自信たっぷりに「そんなバカなこと」と方言周圏論を否定したのだから、それなりに勉強でもするのかと思いきや……百田くんは何もしないのである。松本プロデューサーはみんなに『日本の方言地図』を読んでもらおうと大量に用意したのだが、〈百田君をはじめ番組スタッフは、誰ひとりとしてこの本をまともに読んでくれなかった〉のだ。
〈バカバカしいギャグを考えさせたら天下一品の強者ぞろいだったが、しち面倒くさい勉強は注射よりも大嫌い、という困った連中ばかりなのであった〉
〈それまで一年間、なにかの発見をするたびに意見が欲しくて彼(百田氏)に伝えてきたが、彼はこむずかしい理屈には一向興味を示してくれなかった〉
持論はぶつが、裏付けがない。投げかけられた反論に対し、その中身を知ろうという努力もしない。このエピソードには「これぞ百田イズム!」といった要素が溢れているが、しかし、これくらいで百田伝説は終わらない。その後、松本プロデューサーは時間をかけて調査・研究を行い、さすがの百田くんも方言周圏論に納得するようになるのだが、今度は松本氏の調査報告に対して、十八番の「絶対に間違いないでしょう」を連呼しはじめたのだという。自分で調べたわけでもなければ、根拠も何ももっていないというのに。
もちろん、“みじめアタッカー”時代から百田くんを見てきた松本氏は、こうした断言癖を知り尽くしているのだろう。〈百田君の自信にあふれた意見は、これまでの経験からしてけっして鵜呑みにはできなかった〉と述べ、「またまた、『絶対に間違いない』かいな。あんたにそれ言われると、かえって自信を失うわ」とツッコんでいる。