たしかに『ドラゴンボール』以来、鳥山明は代表作といえるマンガ作品を書いていない。
「あるところから書かせてはいけないところがあるんですね。作家さんには。(鳥山明は書かせてはいけないラインを超えて)真っ白になっちゃったんですね」
そう、鳥嶋氏は分析する。一発当てれば巨万の富が築けるマンガ家稼業。もちろん鳥山明はバクチの大成功者であるが、その代償も大きかった、ということなのだろう。
もっとも、ここに“金儲けに目がくらんだ出版社”と“潰された天才クリエイター”といった図式を見るのはたやすい。しかしその背景には「売れているモノ」ばかりを支持する読者の存在も大きいだろう。アンケート至上主義を謳う「ジャンプ」作品にあってはとくにそうだ。
そう考えてみると、最近の「ジャンプ」の“目玉マンガ”はどれも10年以上続いている長期連載作品ばかり。『ワンピース』はまったく終わる気配のないまま77巻を数え、『HUNTER×HUNTER』は何度目の休載か分からなくなっても連載だけは続いているらしく、昨年終了したはずの『NARUTO』は気がついたら「外伝」が始まっていた。……エッ、『BLEACH』ってまだやってんの?
それぞれの作者が「真っ白」にならないことを願ってやまない(もうすでになっている人もいるかもしれないが)。
そういえば、今年公開された劇場版アニメ『ドラゴンボールZ 復活の「F」』は、前作『ドラゴンボールZ 神と神』の予想外の大ヒットを受けて制作されたのだという。フリーザの復活を描くこの作品の原作・脚本に、かつて「この次はない」の意味を込めて「Z」をつけた鳥山明その人が参加し、前作を上回る興行収入を記録したのは、なんとも皮肉なことだ。
きっと今回も「フリーザで終わり」にはならないのだろう。
(松本 滋)
最終更新:2018.10.18 04:45