たとえば、橋下は「人を動かすには三通りの方法しかない」として、合法的に脅す、利益を与える、ひたすらお願いする、の3つを挙げたうえでこう説く。
〈そのなかでも、最も有効なのが〝利益を与える〟である。この場合の利益には二通りある。一つは文字通り相手方の利益。もう一つは、実際には存在しないレトリックによる利益だ。言い換えれば、不利益を回避できることによって生じる〝実在しない利益〟と言える〉
橋下がよく使うので有名な「仮想の利益」の解説だが、「大阪都構想が実現しないと大阪はダメになる」と、それこそ「合法的に脅し」ながら、「実在しない利益」を強調するのは、まさにこれであろう。また、「交渉をまとめる基本は二者択一の姿勢」という項目は、大阪の抱える複雑な状況を制度の問題に単純化してすり替え、賛成か反対かを迫る今回の住民投票をそのまま表しているかのようだ。
「相手に考える間を与えないテクニック」の項目は、先述した住民説明会のやり方そのものだ。
〈相手方が、「お話はよくわかった。もう少し考えてみたいので、結論は来週まで待ってもらえないだろうか」などと言ってくるのも常套手段である。この場合も、絶対持ち帰らせてはいけない。その場で決断してもらう。持ち帰られると、こちらに不利な展開となることは必至だ。(中略)交渉には勢いが必要である。相手が揺らぎ出したら、考える時間を与えず、一気に結論までもっていくように努力すべきなのだ〉
さらに、「感情的な議論をふっかけて交渉の流れを変える」の項目。自分の発言の不当性や矛盾に気づいてもポーカーフェイスで通し、知らないふりを決め込むべしと言ったうえで、こう書く。
〈こんなとき私がよく使うテクニックがある。相手方に無益で感情的な論争をわざとふっかけるのだ。いよいよ攻め込まれて、自分の主張が通らないというようなときには法外な要求をして、場を混乱させる。(中略)さんざん話し合いを荒らしまくっておいて、最後の決めゼリフにもっていく。「こんな無益な議論はもうやめましょうよ。こんなことやっても先に進みませんから」。自分が悪いのに、こう言って終わらせてしまうのだ〉
これなどは、「都構想」の効果額をめぐる議会や記者とのやり取りそのものである。
「都構想」という名の大阪市解体プランは、橋下徹という稀代の詭弁家の詐術的弁舌と、彼がまとっている「改革者」イメージのみに支えられた砂上の楼閣であることに、もうそろそろ大阪市民は気づいてもいい。
(安福 泉)
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最終更新:2015.05.15 08:05