また、滝沢氏は別項でも能年のことをこのように記述している。
〈オーディションで、いつもいいところまでいくのに、最終試験で落とされてしまう少女がいました。その子は極度の人見知りで、人前で自己PRをするのがとにかくヘタだったのです。そのせいで、本当はすごく魅力的な子なのに、役を逃がしてきました。
そこで、「あなたの一番の魅力は、他の人がバカにしてやらないようなことを、まっすぐまじめにやれること。だから、いい恥をかこう。まじめに恥をかけば、それをおもしろいと思ってくれる人が必ずいるはず」とアドバイスしました。〉
そんな能年のもとに、〈「町おこしでアイドルを目指す女の子の役」のオーディション〉がやってきた。最終面接は歌と自己PR。滝沢氏は能年に秘策を伝授する。
〈他の子が16ビートでキレのいいダンスを踊る中、彼女には、首を左右にかしげながら4ビートで踊る、昭和のダサかわいいアイドルのようになってもらったのです。〉
この作戦が功を奏したのか、能年は主役・天野アキ役を掴む。滝沢氏はこのオーディションについて、〈彼女に眠る爆発的な魅力を披露できた、本当に感動的な瞬間でした〉と振り返っている。
「生ゴミ」の例に顕著なように、滝沢氏は“欠点こそ魅力である”と提唱する。人に嫌われることを恐れるな、自分を愛して、自分をほめてあげよう──。滝沢氏の主張はまるでベストセラーになった『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社)のようだ。芸能マスコミは滝沢氏が危険思想の持ち主であるかのように煽るが、なんてことはない、たんなる自己啓発ではないか。
むしろ同書から強く感じるのは、いかに滝沢氏は能年の魅力を見事に引き出し、肯定してきたか、ということのほうだろう。
というのも、能年は13歳で「第10回ニコラモデルオーディション」に合格し、ティーン向けのモデルとして芸能界入りしたが、注目を浴びることもなく鳴かず飛ばず。「ニコラ」モデルをクビ寸前だったとも噂されたことさえあるほどだった。そんななかで出会ったのが、滝沢氏の“いい恥をかこう”“欠点を魅力に変えよう”という自分を認めてくれる言葉だった。実際、『あまちゃん』(NHK)の最終オーディションでは、チーフプロデューサーの訓覇圭氏によると能年が一番演技が下手だったというが、橋本愛や有村架純、松岡茉優、モデルの森星らという錚々たる顔ぶれが並ぶ約2000人のエントリーのなかから、能年が主役の座を獲得した。そこには、あえてダサい踊りで勝負に出るという、能年がもっとも輝くアピール手段を編み出した滝沢氏の作戦によるところも大きいはずだ。
しかも、独立騒動に発展するまで能年を追い込んでいるのは、むしろ、所属事務所・レプロの問題なのだ。たとえば、本日28日に発売された「週刊文春」(文藝春秋)では、いかに能年が事務所から冷遇されてきたかが詳細に語られている。