かつての「就職氷河期」から脱却したとはいえ、大手企業に入りやすくなったかというと、決してそういうわけではない、いまの就職戦線。あたかも自由競争であるかのような就活だが、確実に学歴差別・性差別は存在しており、中堅以下の大学生はそれなりの就職先を目指すほかないのだ。
この状況について、評論家で人材コンサルタントの常見陽平氏は著書『「就活」と日本社会──平等幻想を超えて』(NHK出版)のなかで、日本の就活の不平等性について指摘したうえで、学生たちに対してその対応をこう説いている。
「いま、日本の就活を見直すうえで、問い直すべきは、就活は平等になり得ないという視点である。このことを再確認したほうが、若者は就活の構造的、摩擦的な問題をむしろ軽減できるのではないだろうか。これが、筆者の暴論のような正論である」
“学歴差別”や“性差別”は学生にとってチャレンジの機会さえ奪われる理不尽な人権侵害であることはもちろんだが、企業にとっても型にはまった人材しか採用できない状態が続き、業績発展が阻害される大きな障害になりかねない。
そういう意味では、この就職差別は到底、承服できるものではないが、しかし、常見氏が言うように、そういった現実がある以上、学生はこの格差社会を真正面から受けとめて、会社の規模や企業名、ブランドイメージにこだわったムダな就活をキッパリとあきらめたほうがいいのかもしれない。その時間を友好活用して学生生活を充実させ、小さくても将来性のある企業や新しい働き方を探す。10年先、20年先を考えれば、そのほうが、ずっと新しい未来が開けるかもしれない。
(田中ヒロナ)
最終更新:2017.12.19 09:55