そして、戦時下ではさらにセックスこそ至上の悦びであった、と塚本氏はいう。いつ死ぬかわからない状況下にいた男女たちは、「太陽の届かない防空壕の中でも性交に浸っていたという。それも、何度も果てることなく女の膣内に射精し、飽きることなく、女の体を撫でまわしていた」らしい。
同様に、常識では考えられないセックスも横行。なんと、近親相姦も少なくなかったというのだ。しかも、「妹がかわいくてしかたなくて、ついつい……」などという薄っぺらい設定など笑止千万。事態はもっと切羽詰まったものだ。
「息子に『赤紙』が届くと、出兵兵士として戦地に駆り出された。もう二度と故郷に戻って来られないかもしれない。そのとき、まだ女を知らない息子がいたら、なんとかしてやりたいと思うのが、家族の心情だ。女も知らずに戦地に向かう息子のために、母親や姉、妹が操を捧げるといったことが、実際にあったのだ」
この話が嘘か本当かはわからないが、本当ならなおさら戦争には巻きこまれたくない、と切に思う。親に男兄弟とのセックスを強要される姉や妹、母親から迫られる息子……そこにはエロもロマンも、セックスの大前提である選択権さえない。
塚本氏の言い分は、こうだ。
「戦中・戦後間もない混乱期。日本人は、現代よりずっと貧しくて、苦しかった。それでもあの時代、私が見てきたかぎり、多くの日本人が性を謳歌していた。そうしないと、やっていけなかったのだ」
彼からみると、現代の若者は性を謳歌していないと映るのだろう。実際、その通りなのかもしれない。でもそれは「それでもやっていけるから」だ。だいたい、セックスほど押しつけられれば押しつけられるほどやる気を失うものもない。スペルマのごとくたぎる想いがあることは十分伝わるが、若者にとってこの説教は、ちょっと濃すぎるのかもしれない。
(林グンマ)
最終更新:2018.10.18 05:13