そして、「週刊朝日」のレポートで目を引くのは、“優等生であるために、ひきこもりになるケース”だ。その例を紹介しよう。
〈30代まで社会人経験がなく、2人の子を育てる専業主婦〉だったある女性は、日本に根強く残る“妻である自分は夫の所有物”という価値観に縛られていた。そのため、どんなに理不尽で身勝手な夫からの要求にも反論ができず、いつも言いなり。深夜に「迎えにこい」と言われればそれに従い、眠る子どもを抱いて車を走らせ、それでも壁にドアをぶつけてしまったら夫から殴られる……。夫の顔色を窺ってばかりの生活の果て、彼女はパニック障害を発症してしまった。
夫に従わなくてはという気持ちから、強いストレスを溜め込んでしまう。──彼女はその後、自分のやりたいと思うことを見つけることで元気を取り戻し、ついには夫との立場も逆転。〈(彼女が)深夜まで飲み、夫に車で迎えに来てもらうまでになった〉というが、こうした古い男女の価値観からひきこもりに陥ってしまうのは女性特有といえるだろう。もちろん、女性自身が規範にとらわれない考えを身につけることも必要だが、男性の意識の変革なしには、このようなケースを解消することは難しい。
〈夫の口から何かの拍子にポロリと飛び出す「誰のおかげで食べさせてもらってると思うんだ!」という常套句がある。「よい妻」「よい母」は男性にとっての都合のいい幻想に過ぎないのに、社会は妻がひきこもることをこぞって強制してきたといえないだろうか〉(池上正樹氏「週刊朝日」のレポートより)
さて、こうして「主婦のひきこもり」例を見ていくと、あることに気づく。わたしたちがもっともよく知っている「ひきこもり主婦」は、雅子妃ではないか、と。昨年10月、11年ぶりとなる宮中晩餐会に出席した雅子妃だが、長く患っている適応障害はまだ全快にいたってはいないという。この間、雅子妃はたびたび「公務に参加しないくせに、娘の愛子さまをかまってばかりだ」とバッシングにさらされてきたが、世間の声という強いストレスのなかでは、治るものも治らないだろう。
池上氏は、ひきこもりの特徴をこのように綴っている。
〈これ以上傷つけられたくないし、相手を傷つけたくもない。空気を読みすぎて周囲を気遣いすぎ、迷惑をかけることを忘れ、疲れ果て、社会から離脱していく。そんな“諦めの境地”が、ひきこもり当事者たちには共通している〉(「週刊朝日」より)
一般社会だけでなく皇室の世界でも生じている、ひきこもり主婦という問題。解決の糸口を探るためにも、その実態調査が待たれるところだ。
(田岡 尼)
最終更新:2018.10.18 03:13