タリバンが町を支配するようになってから、学校には看板も立てられず、ただ白い壁にドアがあるだけ。そのドアの向こう側の学校を、マララはこんなふうに語る。
学校には友だちだっている。親友のモニバとは「なんでも隠さず話しあえる。ジャスティン・ビーバーの歌のことも、映画『トワイライト』のことも、色が白くなるフェイスクリームのこと。」ジャスティン・ビーバーに『トワイライト』に、フェイスクリーム……日本のギャルとも大差ない、他愛もない会話を楽しんでいる。
容姿も気になるようだ。
「わたしも母みたいに、白ユリのような肌と、整った顔だちと、緑色の目を持って生まれたかった。でもわたしは父親似で、肌は浅黒い。鼻は団子鼻だし、目も茶色だ。」
「わたしはヘアスタイルを変えるのが趣味になった。バスルームにこもって鏡と向かい合い、映画でみた女優のヘアスタイルをまねていると、時間がどんどんすぎていった。」
自分の容姿に少々コンプレックスをもったり、ヘアスタイルにこだわって何時間もバスルームの鏡とにらめっこし母親に怒られる、いかにも思春期の女の子らしい日常ではないか。
ちなみにマララの母親は「とびきりの美人」で、両親はマララの社会では珍しく恋愛結婚だ。父は読書家で母に詩を書いて送ったが、母はその詩を読むことができなくて、学校に行かなかったことを後悔したという。
そんな両親の影響もあってか、マララは本が大好きな女の子だ。『アンナ・カレーニナ』、ジェイン・オースティンの小説、『アンネの日記』、『ホーキング、宇宙を語る』『ロミオとジュリエット』、『オリヴァー・ツイスト』『オズの魔法使い』……。本を読み、主人公たちの想いを想像し、ときに自分と重ね合わせる。
というと、おカタい優等生のように感じるかもしれないが、けっこうミーハーなところもある。映画や海外ドラマも好きなようで、とくにお気に入りはアメリカのテレビドラマ『アグリー・ベティ』だ。
「歯列矯正の器具をつけていて容姿はいまいちだけど、とてもやさしい女の子の話だ。すごくおもしろかった。わたしもいつかニューヨークに行って、あんなふうに雑誌の出版社で働いてみたい。」