もちろん、これらは世界をイスラムvs西洋といった雑駁な対立構図でしかとらえることができず、明晰な知性と強靭な精神をもった若者の出現を、どうしても誰かに操られているということにしなければ理解できない者たちの妄想にすぎない。
マララの訴えはそのような単純な図式化を超える膨らみをもったものだ。
マララの思想的出自は、日本ではまったく伝えられていない別なところにある。それは、歴史上いつも、社会矛盾に直面した若者たちの武器となってきた思想だ。
2013年にパキスタンで開催されたInternational Marxist Tendency(マルクス主義国際潮流 略称:IMT)の会議で、英国滞在中のマララ・ユスフザイから送られたメッセージが読み上げられた。
マララはこう断言する。「社会主義が唯一の答えだと確信しており、この戦いを勝利の結末に導くよう全ての同志に呼びかけます。これのみが私たちを偏見と搾取の連鎖から解き放つのです」と。また、「社会主義とマルクス主義に導き、昨年のマルキスト・サマー・スクールで話す機会を与えてくれたIMTに感謝する」とも述べている。さらにこの会議には、マララが銃撃されたときにバスに同乗していた親友も出席していた(IMTのHPより)。
また、ニューヨークの独立放送局Democracy Now!は、マララのこの発言を紹介するにあたって、レーニンとトロツキーのポスターを掲げた演卓でスピーチするマララの写真を掲載している。
マララはCIAやイスラエル、ましてやイルミナティのメンバーなどではなく、社会主義のシンパサイザーなのだ。
こういうとすぐに、社会思想史も国際情勢も学ぼうとしたことのないやつらが、「サヨクだ」「アカだ」と騒ぎ立てる姿が浮かんでくる。やつらには社会主義とはソ連や中国などの強権的な国家体制のことだという程度の認識しかないからだ。マララに影響を与えた社会主義はそういうものとは異なっている。社会主義思想とはもっと多様なものだ。