ただ、今回、中川がこれほどまでにバッシングを受けてしまった理由には、彼女の“オタクブランディング”にもあるのではないだろうか。中川だけではなく、アニメ好きであることを芸能人がアピールすると、「ほんとうはリア充のくせに」「ビジネスヲタでは?」「軽々しく語ってほしくない」と、オタクたちから声が挙がることはとても多いからだ。
実際、中川に対しても、大炎上の合間に“小さな炎上”が頻発している。たとえば、中川が大好きだという『ジョジョの奇妙な冒険』のアニメ版主題歌である「ジョジョ~その血の運命~」について「第1話が流れた瞬間にハートが震えて」とコメントしたのだが、ネット民は“実際は第2話から放送された”ことを指摘。アニメ『Free!』についても、Twitterで主要キャラの名前を間違えたことで、中川の代名詞ともいえるアニメ趣味について「やっぱりニワカだったのか」「ニワカでまかせ薄っぺら」として切り捨てられたのだ。
だが、中川といえば、芸能人が二次元好きを公にした先駆者的存在である。先日、よりにもよってこのタイミングで発売された中川にとって初の“アニメ語り本”である『中川ブロードウェイ』(エムオン・エンタテインメント)にも、いかに中川がアニメ好きかが細かに綴られているが、なかでも注目したいのは本書で中川と対談している声優・三石琴乃の発言だ。
三石は『新世紀エヴァンゲリオン』のミサト役や『美少女戦士セーラームーン』の月野うさぎ役で知られる、中川が敬愛する声優のひとり。三石は対談で、中川にこう語りかけている。
「しょこたんのアニメラヴ的なオーラ、私たちの業界にはすごいプラス効果で。ホントは好きなのに『何それ?』って知らないフリをしていたアニメ好きなコたちが、『いいよね』って素直に話せるような環境を作ってくれたのには感謝感謝」
いまではアニメ好きをオープンにすることは実社会でもよくあることだが、中川が注目を集め始めた05年当時は、グラビアアイドルが二次元への愛を語ることはまだまだめずらしかった。とくにバラエティ番組『考えるヒト』(フジテレビ系)で披露したイラストは、アイドルらしからぬシュールさとプロ顔負けの画力が話題を呼び、中川がブレイクするきっかけとなったが、そこには中川のマンガやアニメへの強いリスペクトが感じられた。──三石の発言が示すように、中川はオタク趣味が世間に受け入れられる土壌をつくった功労者といえよう。中川以後、オタク趣味をビジネス利用するアイドルは増えたが、その扉を開いた中川には、損得勘定はなかったはずだ。
だいたい、キャラの名前を間違えることも、主題歌がいつ流れたかを失念してしまうことも、ふつうに考えればあり得ること。そんなに目くじらを立てるような話ではないことは明白だが、ネット民の攻撃は止むことがない。おそらく、知識や情報の体系化がなされていないネット上では、先駆者である中川と、最近の戦略的な“二次元好き”アピールを行うニワカアイドルが一緒くたにされてしまっている部分もあるのだろう。
昨晩10月3日のTwitterでは、「きっと、わかってくれるひとはいる だから笑顔で、いきる」と書き綴った中川。この文面からも長引く炎上に疲弊しているようすが見て取れる。中川の精神面が非常に心配な状態だが、どうかバッシングに負けることなく、乗り越えてほしいと思う。
(水井多賀子)
最終更新:2015.01.19 05:12