『ディズニー こころをつかむ9つの秘密』(渡邊喜一郎/ダイヤモンド社)
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドから今年3月~4月に解雇された従業員(キャスト)が、オリエンタルランド・ユニオンを結成し、彼らの告発からディズニーの過酷な労働条件とブラック企業的体質が次々と明らかになってきた。
だが、これまでのところ、その事実を報道したマスコミはない。いや、ユニオンに取材にきたマスコミすら事実上皆無なのだ。いったいなぜか。
それは、企業の問題点をチェックして報道すべきマスコミがディズニーに篭絡されているからだ。テレビ、新聞、雑誌にとって、ディズニーは広告の大スポンサーであり、マスコミ内部でディズニーランドがタブーになっているというのは、これまでも心ある人々によって語られてきた事実だ。
たとえば、昨年秋、阪急阪神ホテルズで食品偽装が発覚し、社長が辞任する事態となったが、実はその5カ月前に、ディズニー施設内のレストランと東京ディズニーリゾートの3つのホテルでもほとんど同じような食品偽装が発覚していた。ところが、当時、ディズニーへの批判報道は皆無。阪急阪神ホテルズ騒動が起きた時もディズニーの不祥事を蒸し返そうという動きはまったくなかったのだ。
こうしたタブー状態をつくりだしたディズニーのマスコミ対策というのは、いったいどのようなものなのか。その一端が『ディズニー こころをつかむ9つの秘密』(渡邊喜一郎/ダイヤモンド社/2013年) に書かれていた。渡邊氏は1981年、ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド入社組で、マーケティング担当として「集客数目標1000万人」プロジェクトを担った人物だ(開業2年目で「集客数目標1000万人」は達成。なお、2014年度はリゾート全体で約3130万人)。この本では、マーケティング担当として、ディズニーリゾート計画に主導的な役割を果たしたことが書かれている。
「1800億円の大手銀行による協調融資の返済試算から導き出された」数字が「年1000万人」であり、客単価は「入園料とお土産と園内での飲食の3つで1万円という構想を作りました。逆にいえば、そんなふうにお金を使ってもらえるように取り組みをしなければならない」(同書より)
当初の入園料(乗り物券10枚綴りチケット「ビッグテン」)を3700円に設定し、お弁当を持ち込み禁止にするなど「少しでも多くお金を使ってもらわなければいけない」仕組みを作り出したのだ。