【ブラックディズニーその2】
■正社員も逃げ出したブラックな労働現場の歴史とは■
(『9割がバイトでも最高の成果を生み出すディズニーのリーダー』より)
現在は『9割がバイト』だが、実はディズニーランドも最初はオペレーションの中心は、アルバイトではなく正社員だったのだという。
福島氏がディズニーランドオープン以降、最初に所属したのは探検アトラクションのジャングルクルーズだ。「当時、ジャングルクルーズの現場は44人の正社員と『ワーキングリード』と呼ばれる現場責任者によって構成されていました」。しかし、多くのキャストが次々と辞めていったのだ。
「大きな負債を抱えてのスタートで給料が抑えられていたこと、加えて、まだ『テーマパーク』という考え方が一般に普及・浸透しておらず、大規模な遊園地のようにとらえられがちで、キャストが将来に不安を感じたこともあるのでしょう。オンステージ、バックステージを問わず、多くの正社員が退職していきました。当時、辞めた正社員を補充する目的も兼ねて採用された正社員が年間500~700人もいました。いかに多くの正社員が辞めていったかおわかりいただけるでしょう」
辞めた正社員の穴をアルバイトが埋めざるをえなくなった。これが正社員が行なっていた仕事をアルバイトに移行させるきっかけになったのだとういう。
「たとえば、当時『ビッグ5』と呼ばれていたスペース・マウンテン、イッツ・ア・スモールワールド、ホーンテッドマンション、ジャングルクルーズ、カリブの海賊の5つのアトラクションは、正社員がすべてを担当していましたが、そのほとんどの仕事をアルバイトに切り替えていくのです(略)この試練はメリットももたらしました。より合理的なトレーニング方法の開発や新人アルバイトの教育を先輩アルバイトが担当するトレーナー制度の設置など、トレーニングシステムの改善・整備につながり、(略)教育メソッドへ進化していきました」
つまり、正社員が「耐えられない」と逃げ出したキャストという役割を使い捨てのアルバイトに押し付けているというのが現実なのだ。
【ブラックディズニーその3】
■残業を断れないブラックバイトをつくりだす構造とは■
(『9割がバイトでも最高の成果を生み出すディズニーのリーダー』より)
福島氏がキャスト時代に正社員大量採用時代から、アルバイト中心にシフトしたものの、アルバイト不足という問題に悩まされたという。
とくにジャングルクルーズやカヌー探検といったアトラクションは「(上下関係が厳しいなど)精神的にも肉体的にも重労働ということもあり、ほんとうに人が集まりませんでした。そのため、アルバイトに残業を依頼せざるを得ないこともたびたびありました。彼らに残業を頼むのはほんとうにつらいことでしたし、断られても仕方がありませんでした。しかし、幸いにも、多くの場合、アルバイトたちは残業に応じてくれました。そのおかげで、危機を乗り切ることができたのです」
著者は「なぜ自分の都合や予定もあるはずの彼らが東京ディズニーランドの危機を乗り越えるために、自ら“犠牲”になることを惜しまず、心を一にして頑張ってくれたのでしょうか」と書く。
それって、単に上下関係が厳しくて断りきれなかったのではないか!?と思うのだが、福島氏は「現場のリーダーとアルバイト・一般正社員との間に信頼関係が育まれていたからです」と解説する。この本に限らず、ディズニー本に通底しているのは、ディズニーでは自己犠牲こそが美徳になっているということだ(時給で働くアルバイトにもかかわらずだ)。
アルバイトにまで自己犠牲を要求し礼賛する精神。まさに、断りきれないアルバイトにつけこむ現在、社会問題化している「ブラックバイト」問題ではないか。
ブラックな教育メソッド満載の『9割がバイト』3部作は、ブラック企業が横行する現代だからこそ、ベストセラーになったのかもしれない!?
(松井克明)
【検証!ブラックディズニーの恐怖シリーズはこちらから→(第1弾)(第2弾)(第3弾)】
最終更新:2014.11.17 12:10