しかし、現在の山内の状況はともかく、気になるのはやはり、一時期とはいえ、新世代の人気芸人までが、ネトウヨ的な思想に毒されていた可能性が高いことだ。お笑いやトークを見ていると、頭の回転が早いように見える彼らがなぜ、こんなどうしようもない思想にはまってしまうのか。
背景にはもちろん、リテラがしばしば指摘しているような、お笑い業界の構造的な問題がある。日本のお笑いは、もともと前近代的な男尊女卑・パワハラ、反ポリコレ体質を持っていて、ネトウヨと親和性が高いうえ、ほんこん、千原せいじ、小籔千豊、ブラマヨ吉田、そして全芸人の憧れの存在と言っていいカリスマ・松本人志までがこぞって右傾化し、メディアで堂々とネトウヨ的な発言をするようになった。とくに関西では、芸人たちがネトウヨコメンテーターと情報番組で共演して、どんどん売れっ子になっている。こうしたことが、若手芸人にも大きな影響を与えているのはたしかだろう。
また、ライターの吉田豪氏はニコ生の『久田将義と吉田豪の噂のワイドショー』のなかで、ぺこぱ松陰寺のネトウヨ疑惑を受け、こんな分析を語っていた。
「芸人さんってラジオが好きじゃないですか」
「ニッポン放送が最近勢いがあって芸人ラジオも多いから、やっぱり若い芸人はニッポン放送を聞くわけじゃないですか」
「ニッポン放送が青山繁晴をプッシュしたりとか、須田慎一郎、有本香といった面々がコメンテーターだったりとか、かなり保守なラジオを山ほどやっていて、たぶんTBSラジオを聞いていたらそっちにはならなかったお笑い好きの人が、ニッポン放送を聞いて右側に転ぶ可能性ってすごいあるんですよ」
いずれにしても、こうした構造がある以上、山内、松陰寺以外にも、ネトウヨ思想に染まっている若手芸人はかなりの数がいると考えて間違いないだろう。
しかも、恐ろしいのは、将来、こうした若手芸人たちが社会問題にコメントするようになる可能性があることだ。お笑い芸人として勢いのあるいまはお笑い・バラエティ番組しか出ていないが、松陰寺が報道番組をやりたい、と言っていたように、彼らはバラエティ人気が衰えたら、おそらく一斉にワイドショーや情報番組のMCやコメンテーターに進出するようになるだろう。そして、小籔やほんこん、千原せいじらのように、以前から刷り込まれていたネトウヨ的価値観に基づく言説を振りまき始める──。
このところ、渡辺直美やバービー、EXITなど、旧態依然の差別的お笑いの価値観を更新する高い意識を持った芸人が出てきたので少し安心していたが、山内のケースをみると、再び悲観的な気持ちのほうがふくらんでくるのである。
(本田コッペ)
最終更新:2021.03.31 05:21