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稲垣吾郎MC のNHK番組が日本の五輪ナショナリズムやヘイト、排外主義を批判! 稲垣は「ネット右翼」にも言及

 番組では、NHK放送文化研究所が5年ごとに行なっている「日本人の意識」調査で、「日本は一流国だ」「日本人は、他の国民に比べて、きわめてすぐれた素質をもっている」という意識がバブル前夜の1983年調査をピークに下落し、1998年と2003年を底として上昇傾向になっていることを指摘。大澤、島田、中島の3人がこんな分析を語っていた。

 大澤「ボトムになるのが世紀の転換期で、またリバウンドしてるんですよ。これね、また自信を取り戻してきてよかったですね、とか言いたくなるんですけどね、あまりにも根拠がないじゃないですか。はっきり言うとね、自信が無い人って、かえって自信があるように振る舞うんですよ。自信たっぷりないような顔して虚勢を張る。2000年くらいから、日本人はついに自信がないということを言う余裕すら失ってしまった」
 島田「中国の台頭が確かに著しいことがあり、アジアの盟主を気取っていたけれど、もう抜かれたという怨嗟もあるし、バブルの夢をもう一度といっても、奇跡は2度は起きないので、同じ場所で。その怨嗟を手っ取り早く解消するには、近場の国を貶めるとかね。コンプレックスを隠すための見栄を張る」

 すると、稲垣吾朗がこう口を開いたのだ

「自信がないとなると、大きなものがあるとなんか頼りたくなるというか。ネット右翼の人たちもそうかもしれませんし」

 稲垣吾郎の口から「ネット右翼」という言葉が出てきたのは驚きだが、番組はこの後「ナショナリズム」とヘイトスピーチなどの排外主義が表裏一体の関係にあることにまで踏み込んでいく。

「気がつけば、目にする機会が増えてきたナショナリズム。『日本人すごい』『韓国が嫌い』『メディアは反日だ』『霊性に回帰せよ』」

 こんなナレーションが挿入され、VTRには嫌韓を煽る本や雑誌、そして道徳の教科書。クローズアップされたネトウヨ雑誌「ジャパニズム」の表紙には、「森友問題は安倍総理夫妻と無関係」の文字も並んでいた。

 このあと、ヤマザキマリが「自分を守るための誇張した甲冑みたいにナショナリズムを使っているというのが、すごく痛々しかったりとか、そうじゃないんじゃないかと思うときがある」と感想を語り、島田雅彦は「国内で現在ナショナリズムを鼓舞しているようなグループがいるけれども、ちょっと戦前回帰的な主張が多いなかで戦前と違うのは、アメリカにかなり従属しているということ」としたうえで、こんな総括をした。

「ナショナリズムには諸相があると思うんです。憲法改正というのがナショナリズムというような短絡はいけない。むしろ私たちは日本人であることを、どの点において具体的に誇りと思っているのか。かつては他者に優しいとか親切とか、そういうものがいまも維持されているのだとすれば、大いに誇っていいわけです。血統的に日本人じゃない人の数も増えていますけれども、そういう隣人に対して平等に接するというようなこと。ひとりでも多くの人間が日本を好きになる。日本人を友とみなすような状況をつくっていくということ。それは国家の今後のもっとも具体的な安全保障の方法にもなっていくし、共生共存のためのあらゆる努力をするという点において、私たちはナショナリストになることもできると思います」

 そして、番組の最後、稲垣吾郎がこれまでの議論をまとめたのだが、何か芸能人らしく「ナショナリズムは一概に悪いことではない」といった発言でバランスをとるのかと思いきや、稲垣が口にしたのはこんなセリフだった。

「すぐ近くにいる人のことを違うなって思っても、それを受け入れられる。そういう許容、寛容みたいなものって絶対に(必要)。それが広がっていくのかな、なんて、ちょっと夢みたいなことを言ちゃいますけれども」

 ここからも、稲垣とこの番組の姿勢がいまの日本に横行する歪んだナショナリズムとは真逆の姿勢をもっていることがよくわかるだろう。

 繰り返しになるが、日本のテレビは日本で起きている民族差別や排外主義についてはまったく触れないし、むしろ、オリンピックやスポーツで日本を応援することや日本を褒めることは「危険なナショナリズムはまったくの別物」「そういう気持ちを持つのは日本人として当たり前」と強制する空気すら漂わせている。そんななかで、この『100分deナショナリズム』というNHKの番組と稲垣吾朗という国民的なスターが、日本の現在進行形のナショナリズムに向き合い、「日本スゴイ」など一見ライトなナショナリズムが、ヘイトスピーチや排外主義と地続きであると指摘した意義は大きい。

“嫌韓キャンペーン”を牽引してきた安倍首相は、元旦の年頭所感を「いよいよ、東京オリンピック・パラリンピックの年が幕を開けました」と始めた。“五輪ナショナリズム”が吹き荒れるだろう2020年。「上からのナショナリズム」を無自覚に受け入れていていいのか、あらためて考える必要があるだろう。

最終更新:2020.01.09 03:24

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