ところが、この松本の発言にマスコミもネットもまんまと騙されてしまった。とくに悪質なのが、テレビ局だった。朝のワイドショーを見ても、「在京在阪の5社が株主だから大丈夫」という言葉そのまま、吉本のシナリオと松本のガス抜き作戦に完全に乗っかり、「松本さんの男気」と称賛して、岡本社長の謝罪(ともしくは辞任)で済ませようという意図がありありの報道をくりひろげている。
しかし、何度でも言うが、これは会社が組織的な虚偽説明、虚偽説明強要をしたという問題であり、普通の会社なら上層部の引責辞任は必至だ。実際、宮迫、亮の勇気を振り絞った告発会見直後は、世論もそういう声が圧倒的だった。それが、松本の発言で一変してしまったのである。早い段階から、吉本の上層部の責任を追及していた加藤としては、それが我慢ならなかっただろう。
加藤は今回、こうも語っていた。
「ここからどうなるのかっていうのは、僕はその時点で会社が変わらないんだったら、この会社にはいられません。もうこういうことをやってしまって、こういう形になってる、いままでずーっと見てきました。
怖がってる若手社員、若手の人間。いろいろ言われたこともある。会社に言われたからできないんです、言ってる人間もいた。そこでがんばってきてるなかで、ここは変わるときだと思う。
そこがないともう、亮さんと宮迫さんのあの勇気とあの会見が、僕は浮かばれないと思う」
まさに正論だ。しかし、その正論が吉本興業とテレビ局の利権構造の中で、通用するのか。それは、すっかり松本に騙されている世論が目覚めるかどうかにかかっている。
(伊勢崎馨)
最終更新:2019.07.22 05:40