ようするに、途中から、田金の国有地格安売却は私利私欲のためではなく、裁判員制度を守るため、正義のためだったという話になってしまったのだ。
何度でも言うが、まったくワケがわからない。国有地格安売却を無理やり正当化するような展開はもちろんだが、主義主張以前につじつまが合わないことだらけで、ドラマとしても完全に破綻しているのだ。その内容はほとんど放送事故レベルといってもいいだろう。
いったいなぜ、地上波のキー局でこんなひどいドラマが放映されてしまったのか。実は、これには、どうも理由があるらしい。ドラマを放送したテレビ朝日で、内部の圧力により、脚本がズタズタにされてしまったようなのだ。
本サイトでも何度か指摘しているが、テレビ朝日ではいま、あちこちに“異変”が起きている。たとえば夜の報道番組『報道ステーション』から政権批判が極端に減少し、昼の情報番組『ワイド!スクランブル』は9月で橋本大二郎キャスターが降板、代わってネトウヨに大人気の小松靖アナが後任をつとめることが明らかになっている。また朝の情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』もある時期から政治的トピックの扱いが極端に少なくなっているのだ。
その背景には、安倍政権に近い早河洋会長の意向があると言われている。周知の通り、テレ朝の早河会長は2013年より幻冬舎の見城徹社長の仲介をきっかけに安倍首相と会食を繰り返すようになり、それ以降、政権の意向を忖度、安倍政権批判を封じる方向が顕著になったからだ。そしてそれは報道番組や情報番組に対してだけではなかった。あるテレ朝社員はこう話す。
「これまでテレ朝はドラマにおいても社会問題や権力批判に切り込む作品を数多く作ってきました。しかしここ最近、プロットやシナリオ、製作段階での審査、考査が非常に厳しくなっているんです。とくに権力批判などについては、山ほど指摘やNGが入る。その結果、脚本書き直しの連続で、現場は大混乱に陥っています。この『指定弁護人』は森友学園の事件をモチーフにしていますから、相当やられたんじゃないでしょうか。本当はもっとリアルに森友事件を描いて、検察審査会で強制起訴された後の裁判をシミュレーションしようとしていたのに、森友事件と違う要素を入れろとか、大臣を一方的に悪者にするなとか、いろいろいわれて、収拾がつかなくなったんでしょう」
安倍政権の圧力とマスコミの忖度はとうとう、ジャーナリズムだけでなくドラマ制作というフィクション表現にまで及びはじめた、ということらしい。この国の言論は末期症状を迎えているといっていいだろう。
(編集部)
最終更新:2018.09.25 05:16