『#好きなんだ【Type B】通常盤』(キングレコード)
年内でAKB48を卒業する予定の渡辺麻友。10月には地元であるさいたまスーパーアリーナで卒業コンサートが行われるとの情報も発表され、2007年にAKBに加入してから10年以上積んできたアイドルとしてのキャリアにいよいよ幕を下ろそうとしている。
そんななか、8月28日深夜に放送された『Momm!!』(TBS)での発言が話題を呼んでいる。
番組内のスタジオトークで「恋愛禁止ルール」に話がおよぶと、司会の中居正広から「渡辺さんはもう10年ぐらいそのAKBのルールを守ってきたわけじゃん。それでやっぱよかったなと思うのかな? どっちなんだろ? 終わってみて」との質問がなされたのだが、そこで彼女が返した答えは、ファンには少し意外なものだった。
「うーん、まあ、AKBの1メンバーとしてはよかったんじゃないかなと思いますけど、なんか人としての大切な何かを失ったみたいな」
この発言にスタジオは苦笑い。そしてこの後、彼女は続けて「思い返してみたら、なんか小学校のころとか幼稚園とか、なんか同級生とか、あんま男の子に好意抱いたこととかあんまなかったかなと思って。男の子とか、この子好きとかなくて。(それで)中一の最後に(AKBに)入っちゃったんで。趣味人間というか、漫画とか好きでそういうのに没頭してたから」と語り、加入前からマンガやアニメに夢中になっており恋愛にはさほど興味がなかった旨も明かしていた。
恋愛をしなかったからといって人としての大切な何かを失うわけではないし、夢中になるものが他にあってそちらに没頭する人生も、別に変でも間違っているものでも何でもない。
ただ、それは、個人の意志で選んでいた場合である。外部から抑圧されて恋愛する自由を阻害されていた場合、それは問題があるし、「人としての大切な何か」を失わせることにもなるだろう。
巷間しばしば言われている通り、恋愛禁止ルールを振りかざしてアイドルの自由を拘束するのは、明らかに人権侵害だ。弁護士の伊藤和子氏は「AERA」(朝日新聞出版)2016年2月15日号で恋愛禁止ルールについて法的観点からこのように語っている。
「芸能事務所とアイドルの契約において、交際禁止規定という制約を課すのはおかしい。恋愛は、憲法13条で尊重される『幸福追求権』です。いかに契約であろうと、憲法で認められた個人の自由を制限する形の交際禁止規定は無効です」
実際、昨年1月、女性アイドルがファンとの交際禁止ルールを破り性的関係を結んだことで被害を被ったとして、所属事務所が約990万円の損害賠償を求めていた訴訟に対し、東京地裁は「異性との交際は幸福を追求する自由の一つで、アイドルの特殊性を考慮しても禁止は行き過ぎだ」という判決を下し、事務所の請求は棄却されている(ただし、その1年前には交際禁止規則を破った少女側に約65万円の損害賠償を命じるという真逆の判例も出ている)。