「男だ」発言を批判されても「見たまま言うただけや」と開き直った百田尚樹
しかし、百田氏の東京五輪をめぐる差別ツイートはこれだけではない。
7月30日には、中国のリレーメンバーと思しき女子陸上選手の写真に〈中国女子400Mリレー 女子の定義とは〉というコメントをつけたツイートをリツイートし、〈中国の新種目、男女混合リレー?〉とツイート。
また、7月25日には、今度は台湾の卓球選手について、〈卓球の混合ダブルス見てるけど、台湾は二人とも男が出てるんやないの?〉とツイートした。
百田氏が「男」とツイートした、中国の女子リレーメンバー4人も、卓球の混合ダブルスの1人も、言うまでもなく女性だ。にもかかわらず百田は、その容姿をあげつらい「男だ」などと侮蔑しているのだ。
しかも、百田氏がリツイートした中国の女子リレーメンバーの写真は、今回の東京五輪とはメンバーもユニフォームも会場も全然ちがう、まったく別の大会の写真で、フェイクまがいのもの。
中国のリレーメンバーについては写真を見ただけ、25日の卓球混合ダブルスの台湾チームも日本チームに負けていることを考えると、そのプレイぶりを男性選手並みと言っているわけではないだろう。いずれの女性選手もショートカットという共通点があるが、ようするに、髪型かそれ以外の部分か知らないが見た目をあげつらって「男」と罵っているのは明らかだろう。
しかも、このツイートを批判されると、百田氏はこう反論した。
〈わしを誰やと思てんねん! 何も考えんと思い付いたことを呟いてるアホ丸出しの大阪のオッサンやで。 差別意識とか、揶揄とかの意識なんかあるかい!見たまま言うただけや〉(7月25日)
「見たまま言うただけや」って、それこそ外見で人を差別するルッキズムそのもの。しかも、髪型や体型、服装や趣味や立ち振る舞いについて、勝手な「女性らしさ」を押し付け、それに当てはまらないと「男」などと侮蔑するのは、女性差別でもある。
近年、女性アスリートに対するルッキズムや性的消費などが世界的に大きな問題になっている。今大会でも、ドイツの女子体操チームが全身を覆うユニタードを着て演技し、女性アスリートに対する性的視線への抗議を表明。また、森喜朗・組織委前会長の女性差別発言をきっかけにつくられた組織委ジェンダー平等推進チームのアドバイザーに就任した、元水泳日本代表で国連児童基金(UNICEF)教育専門官の井本直歩子氏は、日本の女性アスリート報道について、ルッキズムとジェンダーバイアスが強いと問題提起している。
そうした動きを知ってか知らずか、女性選手の見た目をわざわざ「男」などとあげつらう。百田氏は「差別意識とか揶揄の意識ない」というが、この発言こそ、百田尚樹という人間が差別思想を内面化し、差別について学ぼうともしない、根っからの差別主義者ということをあらためて証明している。