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学術会議任命拒否 宇野重規教授が朝日の書評欄に書いた「暴君」論が「菅首相のことを書いているとしか思えない」と話題

トランプ大統領誕生を契機に書かれた『暴君』に宇野教授も「生々しい」

 たとえば、「いんちきポピュリズム」と題した章では、『ヘンリー六世』を題材にポピュリズムについて論じているのだが、〈ポピュリズムは、持たざる者の見方をするように見えるが、実は巧みに民意を利用するものでしかない〉と喝破。同作に登場する愛国排他を煽った反乱のリーダーであるジャック・ケイドのこんな言葉を紹介する。

「あのすばらしい屈強なイングランドを今こそ取り返さなければならない」「イングランドをふたたび偉大にしよう(make England great again)」

 グリーンブラット氏は、この本を書いた契機について、巻末の謝辞のなかで、〈近々の選挙結果について心配していた〉ところ友人の学者から何か書くことを勧められ、そして〈選挙が最悪の予想どおりになってしまってから〉、妻と息子に〈現在の私たちがいる政治世界にシェイクスピアは異様な関係性を持っている〉と話したところ、その話をまとめるとよいと言われたと明かしている。どの選挙のことかは明示していないが、原書が2018年に発行されていることを考えると、トランプ大統領を生んだ2016年のアメリカ大統領選挙を指しているとしか考えられない。

〈なぜ、国全体が暴君の手に落ちてしまうというなどということがあり得るのか?〉

 グリーンブラット氏は『暴君』冒頭でシェイクスピアは1590年代に始まったその長いキャリアを通じてこの問題に繰り返し取り組んできたと書いているが、これはシェイクスピアが描き続けた問いであると同時に、トランプ大統領登場を目の当たりにしたグリーンブラット氏自身の問いでもあったのだろう。

 実際、アメリカで出版された2018年に、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナルといったクオリティペーパーがこぞって同書の書評を掲載。たとえば、ニューヨーク・タイムズは、同書について、“トランプを一切名指ししていないが、すべてのパラグラフがトランプを指している”と評した(ニューヨーク・タイムズ2018年6月20日「What Would Shakespeare Have Made of Donald Trump?」)。

 そして、宇野教授もまた、〈これは現代の話ではない〉とする一方で、〈本書を読むものは、どうにも生々しく感じられ、私たちの生きている現代世界を反映したものとしか思えないのではないか〉と書いている。

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