分科会メンバーからもGoTo懐疑論が出ているのに菅首相は無視
だが、いまこの最悪の状況をより進行させようとしている“戦犯”は、言うまでもなく菅首相だ。
そもそも「GoTo」は菅首相が官房長官時代から旗振り役となってきた政策だが、本日発売の「週刊文春」(文藝春秋)によると、菅氏に「GoToトラベル」のお墨付きを与えたのは、分科会メンバーで、菅政権になって内閣官房参与に引き立てられた岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長なのだという。たとえば、分科会の前身である専門家会議のオブザーバーだった西浦博・京都大学教授も「“第一波”の時から、菅さんと岡部先生は連絡を取り合っていました」と証言、分科会委員の一人は「菅首相は個人的に岡部氏の意見ばかり聞いて、分科会の議論を尊重しないように映ります」とコメントしている。
菅首相は分科会の議論を無視している──。実際、このことを裏付けるような証言もある。というのも、同誌では分科会メンバーである経済学者の小林慶一郎氏や釜萢敏・日本医師会常任理事が、実名でこう語っているのだ。
「『観光庁が出した(編集部注:GoTo利用の感染者数)百三十八人という数字は全体像を捉えていない』という意見は分科会でも出ていました。必ずしも、GoToで起きた感染を全部拾えているわけではありません。感染が起きていないと印象付けようとしている説明です」(小林氏)
「GoToの影響だけを評価することは難しいですが、人の移動に伴って感染拡大が起きているのは間違いない。医療体制もひっ迫してきています。状況が悪化すれば、GoToの一時停止も含め、抑制的な対策が必要になります」(釜萢氏)
分科会メンバーからこれだけ「GoTo」に懐疑的な意見が出ているというのに、菅首相は一向に「GoTo」にブレーキをかけようとはしない。これでは専門家組織が存在する意味がどこにあるというのか。ようするに、科学・専門的知見ではなく「菅首相の意向」でしかこの国は動いていないのだ。
菅首相の科学者軽視、自分に都合の悪い意見を言う者は排除するという姿勢は日本学術会議問題でも顕になっているが、その態度が、いま政府として当然おこなうべきコロナ対策がまったくおこなわれないという異常事態を招いているのである。
(編集部)
最終更新:2020.11.19 11:16