安倍政権の功績を強調した『ニュースウオッチ9』(公式HPより)
本サイトでも昨日お伝えしたように、28日におこなわれた安倍首相の辞意表明会見では、ほとんどのメディアがぬるい質問に終始し、あらためてそのだらしなさが浮き彫りとなったが、そんななか、最後の最後まで“権力の犬”っぷりを見せつけたのが、「安倍さまのNHK」だ。
そもそも、今回、安倍首相の辞任をスクープしたのは、NHKだった。無論、これは言うまでもなく「安倍首相にもっとも近いジャーナリスト」と呼ばれてきたひとりである、政治部の岩田明子解説委員のスクープだろう。フジもほぼ同時刻に一報を報じたが、その情報量や詳細さはNHKが圧倒していた。
実際、NHKは、ニュース番組を放送していた14時7分に「安倍首相 辞任の意向固める 持病悪化で国政への支障を避けたい」という速報を流したが、その後、10分も経たないうちに岩田記者が解説を開始。そこで岩田記者は、こう解説をおこなった。
「まず、安倍首相の辞任の意向の理由ですけれども、やはり体調が万全でないなかでの政治判断を誤ってはならないという理由が最大の理由だと見られます。2週続けて慶應病院で検査を受けてきましたけれども、その結果、最初の検査で持病の症状が悪化しているということが確認されまして、新型コロナウイルスへの対応が長期戦になることから辞任を決断したものとみられます」
「今月17日の検査で(持病である潰瘍性大腸炎の)炎症の程度を評価するための数値が上昇し、症状が悪化していることが確認されました。違和感は先月の7月ごろから感じていたということなんですね。そして、その次の週の24日の週には、新たな薬・レミケードによる治療で症状がだいぶん改善しているところがみられたんですけれども、このとき、向こう1年間の投薬治療が必要だと診断されたということなんですね」
この解説は、その後17時からおこなわれた会見で安倍首相が語った辞任にいたった経緯や理由とまったく同じ、いや、それ以上に詳しいほどだ。
岩田記者といえば、昨年の改元でも、菅義偉官房長官が「令和」と発表した直後から、「この令和の『令』というのは、良いとか立派なという意味があります。たとえば嘉辰令月ですとか、そういう言葉にも使われるように、良い意味があると」「安倍総理大臣がどういった思いを寄せたのか、それはひとりひとり、個人個人が夢や希望を託せる時代にしたいというこの将来の希望から過去の古典に遡って考え方というものを手繰り寄せたということがにじみ出るのではないかと」など、事前に新元号を知らされ、選定した理由まで伝えられていたとしか考えられないような解説をおこなっていた。このときと同じで、今回の「辞任」スクープも岩田記者が安倍首相本人、あるいは側近から情報を得ていたのだろう。
じつは、第一次政権のときも、会見前に安倍首相の辞任スクープを速報で流したのはTBSで、当時TBS記者だった山口敬之氏が自らのスクープだったと自著で自慢している。つまり今回の辞任も、安倍首相は御用記者へのご褒美にした、というわけだ。
さんざん国民を振り回しておきながら、国民に発表する前に“お友だち”記者を優遇してスクープさせる──。まさに最後まで、政治を私物化していたのである。