『モーニングショー」にも出演する岡田氏が標的に
新型コロナ“第2波”の感染拡大が止まらないなか、大阪府では17日に重症者が70人と過去最多を更新、重症病床の使用率も1日には10.6%だったのが37.2%と3倍以上に跳ね上がっている。さらに東京都にいたっては、厚労省の定義とは違う基準で重症者数を報告していることが判明。重症者数が実態より少なく報告されている可能性まで出てきた。
感染者の拡大によって重症者も増え、医療現場が逼迫する──。7月に入って東京都では感染者があきらかに急増し、その時点からこうした懸念はずっと示されてきた。だが、政府をはじめ、東京都の小池百合子知事も大阪府の吉村洋文知事も、揃って「夜の街」や「若者」をスケープゴートにするばかりで対策の抜本的見直しを図ってこなかった。その結果、「このままでは医療崩壊が現実になりかねない」という切迫した状況まで追い込まれているのだ。
このように、またしても為政者たちの失策が目に見えるかたちになってきたわけだが、そんななか、“このままでは医療現場が逼迫する”と警鐘を鳴らしてきた専門家に対し、トンチンカンなバッシングが起こった。
そして、またもバッシングの標的にされたのは、元国立感染症研究所研究員である岡田晴恵・白鴎大学教授だ。
それは、8月6日発売の「週刊新潮」(新潮社)8月13・20日夏季特大号に掲載された「「医療現場が大混乱に」予言外れた「岡田晴恵さん」の言い分」という記事。
どうも岡田教授の予想が外れたと言いたいらしいのだが、よくもまあ、そんなことが言えたものだ。
むしろ、「予言を外した」のは「週刊新潮」のほうだ。同誌は東京で再び感染者が100人を超え始めた7月、例のトンデモ「K 値」理論をもとに「7月9日ごろにピークアウトする」と予測する大ハズシ記事を掲載(7月16日号)していた。7月9日ごろにピークアウトどころか、その後も感染が全国で急速に拡大していったのは周知のとおり。予言を外したのは、おまえたちのほうだろう。
しかも、今回の「岡田教授の予言が外れた」とする記事も的外れもいいところだ。
この記事では、7月13日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)で岡田教授が述べたこんな言葉を〈驚きの発言は飛び出した〉とし、問題視。その発言は、こういうものだった。
「医療現場も、あと2週間したら大混乱になる可能性もありますよ」
この岡田教授の発言を、「週刊新潮」は〈驚きの発言〉で〈予言が外れた〉と強調するのである。
しかし、現実はどうだったかこの発言から約2週間後には重症者が増加し、医療現場からは悲鳴があがりはじめていたではないか。
たとえば、同月22日におこなわれた東京都のモニタリング会議では、杏林大学医学部付属病院の山口芳裕・高度救命救急センター長は「国のリーダーが使っている『東京では(医療が)逼迫していない』は誤り」と発言。山口センター長はその理由について「2週間先を見越して現場の状況を評価する必要がある」とし、「150%の増加率で患者が増加している状況、重症者が倍増している状況では、とても逼迫していないとは申し上げられない」と危機感をあらわにした。
実際、人工肺(ECMO)の治療を提供する有志の集まり「ECMOnet」のデータによると、7月13日には東京都でECMOを含む人工呼吸器をつけた感染者は9人だったが、2週間後の27日には20人と2倍以上に急増している。
さらに、30日の都のモニタリング会議では「医療機関への負担は深刻」との意見が出たが、それを裏付けるように東京都杉並区にある河北総合病院の岡井隆広副院長は「医療現場はすでに、第2波のまっただ中だ。受け入れ態勢はもう逼迫寸前。8分目まで来ている」(朝日新聞8月1日付)とコメントしていた。
つまり、岡田教授が13日に述べた「医療現場も、あと2週間したら大混乱になる可能性もありますよ」という〈予言〉は、外れたどころか、ものの見事に的中したのである。