吉村知事の「大阪産ワクチン」前のめりに、拙速との批判も
実際、このアンジェスのワクチン開発については、吉村知事と松井市長がバックについたことで、検証プロセスが非常に拙速になっているのではないかという指摘もある。
たとえば、大阪大免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘教授は、時事通信の取材に対し、欧米や中国では、人への治験開始前に動物実験の詳細なデータが公開されているのに、「アンジェスは開示していない」と指摘。「承認後に死者が出たケースも過去にはある。スケジュールありきで進んではならない」と警告を鳴らしている(時事ドットコム6月30日付)。
また、吉村知事がぶちあげた今後の計画についても、危惧の声が広がっている。吉村知事は「10月に数百人規模の治験」としたうえで、「年内に10〜20万単位で製造」と発表したが、ワクチン開発は安全性を評価する第1相臨床試験、投与量などを評価する第2相臨床試験を経て、1000人以上の大規模な第3相臨床試験で安全性、有効性を評価するのが普通だ。ところが、今回は第1相、第2相臨床試験をいっしょにおこなう上、第3相臨床試験についてはまったくふれられていないのだ。
それは吉村知事の会見だけではない。アンジェスも日経バイオテクの取材に「第3相臨床試験がどのようになるかは、現時点では決まっていない」と説明していない。そんなところから、第3相臨床試験を経ないで製品化するつもりなのか、という批判の声が高まっている。
「吉村知事が最初に『10月に数百人規模の治験』『年内に10〜20万単位で製造』とぶちあげたときは、そんなスケジュールでやれるはずがなく、大ボラだと思っていた。ところが、その後の状況を見ていると、それにあわせて、ほんとうに強引な進め方をしている。これからも、何か裏技を使って、治験を簡略化しようとするのではないか」(前出・大阪府政担当記者)