『激レアさん』でのマイナンバー政府公報
新型コロナに乗じて、またも安倍政権が火事場泥棒を働こうとしている。一律10万円給付金のオンライン申請で役に立たなかったマイナンバー制度をさらに広げ、1人につき1つ預金口座を紐付けすることを義務化する方向で動きはじめたからだ。
まったくふざけるな、という話だろう。前述したようにマイナンバーカードを使った一律10万円給付金のオンライン申請では、自治体側が住民基本台帳との照合といった確認作業に追われるなどし、結局、6月4日時点で54自治体がオンライン申請の受付を停止する事態となった。オンライン申請でマイナンバーを使わない方法も考えられたのに、普及率を伸ばしたい政府がマイナンバーカードでの電子認証にこだわったために、このような混乱が生じたのだ。
そもそも、マイナンバーカードの交付率が約16%にとどまっているのは、この国の個人情報管理が信用ならないからだ。実際、行政や公共機関による個人情報の流出事件は後を絶たず、データ入力作業を海外企業に再委託していたことが発覚するなど、問題づくしだ。しかも、会計検査院が今年1月に国会報告した調査報告書では、マイナンバーの情報漏洩対策が不十分な自治体があり、「正規の権限を持たない職員が個人情報に不正にアクセスするリスク」を指摘。国が自治体の情報セキュリティ対策支援のためにつくったウェブサイトもほとんど利用されていないという実態があきらかになっている(朝日新聞1月16日付)。
マイナンバー制度の導入に約3000億円も投じておきながら、セキュリティ対策は脆弱な上、個人情報の取り扱いもずさんで、いざというときにシステム障害を起こす……。こんな体たらくのくせに、安倍自民党や田崎史郎氏といった安倍応援団は給付金支給が遅れていることを逆に「マイナンバーと口座が紐付けされていれば迅速に給付できる」などと強弁。迅速な給付と言うなら、マイナンバーと紐付けしなくても、次の給付に備えて任意で水道料金などのように口座届け出を呼びかければいいだけの話なのに、問題点の見直しをすっ飛ばし、混乱を利用して国が個人の所得や資産の状況を把握できるシステムをつくり上げようとしているのである。
マイナンバーは家族関係や収入、病歴など個人の情報を一元化して国が把握しようという危険なものだが、とりわけ国民監視に血道を上げる安倍政権においては悪用の狙いしか感じられない。それを新型コロナに便乗して口座紐付けを義務化しようとは、まさしく火事場泥棒ではないか。
しかも、だ。この間、政府はマイナンバーカードの普及のために莫大な税金を使ってCMを打ちまくっているが、なんと、あの問題となった番組でも広告キャンペーンがおこなわれているのだ。
その番組というのは、ニッポン放送が深夜に放送しているラジオ番組『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』だ。
ご存じのとおり、岡村は同番組の4月23日放送回で「コロナが明けたらかわいい人が風俗嬢やります」などと発言。生活苦によって自らの意志に反して性風俗業に従事せざるを得ない女性が存在するという「性的搾取」の構造を認識しながらその状況を歓迎するという女性の尊厳をまるで無視した差別発言をおこなったばかり。
だが、この番組に6月から内閣府がスポンサーに入り、深夜2時半すぎから約3分間にわたって『パンサー向井の教えて!!マイナポイント』なるインフォマーシャルをおこなっているのである。