会見を打ち切るために、19時から対策本部の会合を入れた安倍首相
いや、この2週間おきの実施がデフォルトのようになってきた総理会見自体が、「やってる感」演出のセレモニーでしかないのだ。
実際、これまでの会見では、記者の質問に最後まで答えないまま強引に打ち切ってきたくせに、会見が終わると安倍首相が自宅に帰宅していたことに非難が殺到。それを受けて、なんときょうの会見のあと、19時からは対策本部会合の日程を入れてきたのだ。
普通、対策本部をおこなってから総理会見を開催するのが順序というものだが、ようするに、「また質問を打ち切って私邸に帰った」と批判されるのを封じ込めるためだけに、対策本部の日程をセットしたのだ。姑息にも程があるだろう。
しかも今回、記者からの質疑応答では、2月29日の総理会見で「まだ質問があります!」と声をあげていたのに無視したフリージャーナリストの江川紹子氏や、これまで安倍首相の会見で一度も指名を受けてこなかった「ビデオニュース・ドットコム」の神保哲生氏を指名。江川氏や神保氏の鋭い質問に安倍首相が答えざるを得ない状況になったこと自体は進展と言うべきだが(前述したイベント業者への補償の質問も江川氏によるものだった)、江川氏や神保氏を指名したのはじつのところ、会見打ち切りの際に「まだ質問がある」「最後まで答えるべき」という批判の声が両氏からあがるのを抑え込むためだったのではないか。
現に、質疑応答に移る際には、会見の進行役である長谷川栄一・内閣広報官が露骨にも「現下の状況をご賢察いただきまして、ご質問希望の意思表示は声ではなくて挙手でお願いしたい」などとアナウンス。会見場での感染を用心するなら安倍首相もマスクを着用するとか記者にマスクを配布するとか対策もとるべきだが、それもせずに「声をあげるな」と釘を刺したのだ。
会見直後にこれみよがしに予定を入れ、感染防止を盾にして「意思表示は声ではなく挙手しろ」と要求する官邸に、まともに記者の質問に答えようという意志はまったく見られない。事実、会見が打ち切られたとき、挙手していた記者はいたのに、会見は強制終了されてしまった。
結局、安倍首相の「やってる感」アピールの場だという本質は変わらないままの総理会見──。だが、こんな独断を許していていいわけがない。実際、総理会見をめぐって、ついには国民の生命にもかかわる問題を生んでしまったからだ。