首相官邸HPより
これで国民が納得したり安心したりできると、ほんとうにこの男は思っているのだろうか。本日18時から安倍首相が新型コロナ対策にかんして3回目となる記者会見を2週間ぶりにおこなったが、その中身はスカスカどころか、具体的な話はまるでゼロだったからだ。
その最たるものが、国民の不安が募りに募っている生活補償についてだ。
「仕事が減るなどにより収入が減少し、生活に困難を来す恐れがあるご家庭には、返済免除も可能な小口資金支援、税や公共料金の支払いの猶予などをすでに進めてきましたが、これに加え、思い切った生活のための給付を実施してまいります」
2週間ぶりの会見だというのに、生活補償にかんして自ら言及したのは「思い切った生活のための給付を実施する」、たったこれだけ。一体どれくらいのレベルの給付金になるのかといった具体的な数字は、最後まで挙げなかったのだ。
自民党からは生活補償策そっちのけで「お肉券」だの「お魚券」だのといった虚構新聞かと見紛うような噴飯ものの経済対策案が飛び出す有様だが、それを受けて不安を募らせる国民に対し、不安を払拭する具体的な補償案を具体的に提示するはず。会見前はそう思っていた。ところがどうだ。2週間前の会見で「一気呵成に、これまでにない発想で思い切った措置を講じていく」と言っていたのに、今回も「思い切ったことをやる」と言うだけだったのだ。
なかには「国会での今年度補正予算案の審議がこれからだから安倍首相は言及できないだけ」と擁護する者もいるかもしれないが、これまで審議前でも安倍首相は勝手な構想をぶち上げてきた。しかも、海外に目を向ければ、議会で承認される前から各国の政府は国民に安心をもたらすための大規模な対策を早急かつ次々に打ち出している。
たとえばアメリカでは、17日にムニューシン財務長官が50兆円規模の国民への現金給付を2週間以内に実施したいという考えを公表し、実際に27日には年収7万5000ドル(約825万円)以下の大人1人あたり最大1200ドル(約13万円)、子どもに500ドルを支給する家計支援策を含む経済支援策が連邦議会下院で可決、成立した。「一気呵成に」とは、こういうことを言うのではないか。
しかも、これだけ経済・生活補償策を打ち出すのに時間をかけまくっているというのに、安倍首相はこんなことまで言い出した。イベント自粛にともなう補償策をおこなう気はない、と言及したのだ。
安倍首相は「人びとの心を癒やす文化や芸術、スポーツの力が必要です。困難にあっても文化の灯は絶対に絶やしてはなりません」などと美辞麗句を並べていたのだが、質疑応答で「イベントの自粛要請に応えているところには必ず補償すべきでは」と問われると、「損失を税金で補填することはなかなか難しい」「そうではない補償の仕方がないかということをいま考えているところ。給付金も考えていきたい」と発言したのである。
政府が本当にイベントで感染の危険があると感じているならば、「自粛」などと言って主催者の自己責任に委ねるのではなく、政府が責任をもって補償するべきだ。こんなことは2月の基本方針のころからずっと指摘されてきたことだが、政府は一切対策を取らず、放置してきた。さらに、24日には政府はイベント業界の関係者からヒアリングをおこない、そこでも参加者から「イベントの自粛要請によって生じた損失を補償してほしい」という声があがっていた。だが、そうした生の声を無視し、「税金での補填は難しい」と言う……。結局、いまおこなわれている業界ヒアリングというのは「声も一応聞きました」という既成事実づくりでしかないのではないか。