DHCテレビ『真相深入り!虎ノ門ニュース』2月11日放送回より
国内で、新型コロナウイルス感染者が次々、判明している。いずれも現時点で中国への滞在や中国人との接触はなく、感染経路は判明していない。別稿で指摘したが、これは、クルーズ船留め置きや入国拒否、渡航制限といった安倍政権による「水際作戦」がなんの意味もなかったことの証明だろう。
いや、意味がなかっただけではない。本来は意味のない水際作戦などより、国内感染を見据えて検査・治療体制を整えるべきだったのに、安倍政権は「金がかかる」という理由で、保健所で検査できる対象を中国への渡航者に限定(最初は武漢への渡航者だけ)。一般の人は疑わしい症状があり、検査を希望しても、検査してもらえなかった。それが潜在的な国内感染者を増やしてしまったのだ。
ところが、である。Twitter上では、ネトウヨインフルエンサーの極右文化人たちが、いまだに「中国人の入国を止めろ」と奇声をあげているのだ。たとえば、『真相深入り!虎ノ門ニュース』(2月11日放送)で「新型ウイルスなんて名前やめよ。中国肺炎や」などと言っていた百田尚樹氏は、こんな投稿を連発している。
〈東京でタクシー運転手が中国肺炎を発症したらしい。
もし中国人観光客から感染したとすれば、潜伏期間から考えて、武漢封鎖の直後に中国からの観光客を止めていれば感染はなかったかもしれない。
まあ、過ぎたことを言っても仕方ない。
今からでも日本政府は、中国からの渡航制限をするべきだと思う。〉
タクシー運転手は中国人を乗せた記憶はないと言っているのに、中国の観光客を止めていれば……っていったい何を言っているのか。そもそも、このグローバル社会で、海外からの渡航者を完全に止めることなんてできるはずがないし、WHOや多くの専門家も「特定の国の在住者を渡航制限は意味がない」「入国拒否に科学的根拠がないのは明らか」と言っている。
しかも、驚いたのは、百田が中国人や中国渡航歴との接触がない国内感染者がどんどん増えていることがわかっていて、中国からの渡航制限をすべきなどと言っていることだ。百田はこんなツイートもしていた。
〈ついに恐れていたことが起きた。
国内で中国肺炎に感染した日本人が死亡した。
パンデミックの足音が聞こえるようだ。
ところが、唖然とすることに、この期に及んでも、官邸は中国人観光客の入国を止めようとしない。
この国の政治家はカエルの脳みそか!〉
〈既に相当数の感染者が日本にいると考えて間違いない。
これからは自分の身は自分で守るしかないが、それでも敢えて政府に言いたい!
今からでも中国からの観光客を止めてほしい!
感染者の入国を一人でも減らしてほしい。〉
「カエルの脳みそ」なのはどっちなのかって話だろう。何度も言うが、いま、必要なのは、意味のない水際作戦ではなく、誰でもすぐに検査を受けいれる体制や感染者への治療、ケアであることは医療の専門家が口を揃えている。たとえば、感染症に詳しいナビタスクリニック理事長の久住英二医師はこう指摘している。
「今までやってきたことを大いに反省し、すでに国内に蔓延している考え、水際対策ではないところに軸足を移さなければ、今後こういったケースは続発してしまうと思う。感染の原因があたかも中国人であるかのような、思考停止して中国人に紐づけして何となく海外から持ち込まれたものとしてしまいがちだが、そういう段階ではない。地域の保健所が“外国の方と接触歴がないから検査ができない”といったことを言っていてはダメだ。検査の“武漢縛り”や“湖北省縛り”が緩和されて検査できる方が増えてくると、こういったケースがもっと表に出てくると思う」(『Abema Prime』2月13日)