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伊集院光がNHK『100分de名著』で「東京五輪、本当にいるのか」! 全体主義生む構造を指摘したハヴェルに触発されて

番組Pはハヴェルに「強権的な政治手法とどう向き合うかを学ぶ」と予告

 物質的な安定と引き換えに、自分の良心や責任を差し出す。まさに、いま日本のありとあらゆる組織で起きている事態だ。

 そして、この阿部氏の解説を聞いた伊集院が、冒頭で紹介した「東京五輪、いる?」発言をしたのだ。詳しく紹介しよう。

「俺ね、これ言うの勇気いるんだけどさ、東京オリンピックって本当にいるのかなってまだ『いだてん』見終わっても思ってるんだよね。いや、いまさら言ってもってちょっと思うわけ。止まんないし。あと、言うとさあ、「おまえ、スポーツ特番出ないのかよ」って言われる。出るのよ、俺。
今日、勇気いるねえ。テレビに出るに当たって。でも、そういうことを突きつけてくる本なんだっていうのはちょっとわかってきました」

 上述したように、現在テレビは東京五輪礼賛ムード一色。「国民一丸」「日本全員団結」「one team」「一緒にやろう2020」などのスローガンが飛び交い、批判や異論を挟む余地はほとんどない。ましてやメディアで「東京オリンピックいらない」などと口にすることなど絶対に許されない。

 そんななかで、伊集院はまさに、この状況こそがハヴェルのいう「ポスト全体主義」であり、物質的な安定と引き換えに、自分の良心や責任を差し出した結果であると喝破したのだ。それこそ相当な「勇気」が必要だったはずだ。

 いや、伊集院だけではない。伊集院が「今日、勇気いるねえ。テレビに出るに当たって」と話したように、『100分de名著』の番組自体が、明らかに安倍政権下の日本で起きている事態と対峙するためのテキストという文脈で、ハヴェルの『力なき者たちの力』をとらえていた。

 たとえば、番組では、ハヴェルが「ポスト全体主義体制」について書いた、こんな一節も紹介していた。

〈過去を偽造する。現在を偽造し、未来を偽造する。統計資料を偽造する。全能の力などないと偽り、なんでもできる警察組織などないと偽る。〉
〈人権を尊重していると偽る。誰も迫害していないと偽る。何も恐れていないと偽る。何も偽っていないと偽る。〉(『力なき者たちの力』)

 植民地支配や戦争犯罪をなかったことにする歴史修正、公文書改ざん、統計不正。政権の私兵に堕している公安警察や検察。これらは、安倍政権下で起きていることを想起させる部分をあえて抜き出したのではないか。

 また、番組公式サイトの「プロデューサーAのおもわく」というコーナーでは、この本をいま日本で取り上げるということの意味についてこう綴っていた。

〈ハヴェルの研究を続けるチェコ文学者の阿部賢一さんは、現代にこそ「力なき者たちの力」を読み直す意味があるといいます。豊かな消費社会を享受しながらも、IT技術による高度な情報統制や、個人生活の監視が巧みに強化されつつある現代社会は、たやすく「ポスト全体主義」体制に取りこまれていく可能性があるといいます。番組では、この著作を現代の視点から読み解くことで、世界を席巻しつつある高度な管理社会・監視社会や強権的な政治手法とどう向き合ったらよいかを学ぶとともに、全体主義に巻き込まれないためには何が必要かという普遍的問題を考えていきます。〉

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