韓国への強硬姿勢を政権浮揚に利用してきた安倍政権が産経に「無断撮影」イチャモンをリーク
産経新聞東京本社が入る東京・大手町のサンケイビル(「無断撮影」してきました)
しかし、この問題は産経新聞という“右翼フェイク新聞”の話だけではない。というのも、この三流芸能人のいちゃもんツイートみたいな話は、安倍政権サイドが書かせた可能性が極めて高いからだ。
実際、先に紹介した「SNSでも相手の許可を得るのが常識」発言も外務省幹部のコメントだったし、それ以外にも、記事にはやたら政府関係者のリークと思われる記述が登場する。
〈いわゆる徴用工判決で生じた日韓請求権協定違反を是正することなく日韓関係を改善させたい韓国が、一方的に首脳間の対話を内外に示そうとしたためだが、日本政府は用意周到な韓国側の“不意打ち”に対韓不信を強めている。〉
〈「あれは信義則に反する」。複数の日本政府関係者が口をそろえて憤る。〉
〈しかも韓国側は両首脳の接触から写真撮影、速やかな公表まで周到に準備していた節がある。〔中略、握手した首脳たちの〕最後の位置にいる文大統領から話を持ちかけられれば、首相は断りづらかったと思われる。〉
ようするに、日本の政府関係者(おそらく官邸幹部だろう)が4日の「10分間会談」自体を“韓国が仕込んだ卑劣な罠”であり、公開された写真を「無断撮影だ」と(裏でこっそり)攻撃しているのだ。
たしかに、文大統領は友好的対話によって徴用工問題などで悪化している日韓関係の打開をはかろうと歩み寄っているが、安倍政権の強硬姿勢はまったく変わっていない。
4日の「10分間会談」をめぐる日韓両政府の反応も180度逆だ。青瓦台は公式サイトで〈文大統領と安倍首相は、非常に友好的で真剣な雰囲気で会話を続けた〉〈文大統領は、必要に応じより高度な協議を行う可能性の検討を提案。安倍首相はあらゆる手段で問題解決をはかる努力をすべきと応じた〉などとプレスを打った一方、菅義偉官房長官は5日の会見で「日韓関係では引き続き政府としての一貫した立場に基づき、韓国側に賢明な対応を求めていく考えに変わりない」と述べていた。
輸出規制や「ホワイト国除外」など対韓圧力を連発し、「嫌韓キャンペーン」を張ることで政権浮揚に利用してきた安倍首相にとって、「10分間会談」を韓国との融和・対話路線と見られることは都合が悪いからだろう。その延長線上で写真についても、“御用紙”である産経に「あれは韓国が勝手にやった」「安倍首相は文大統領を許してない」と吹き込んだのではないか。
しかし、その言い訳というのが「不意打ち」「無断撮影」、あげくは会談そのものについても「安倍首相は断りづらかった」とは……。一国の宰相がキャッチセールスで高額商品を買わされた気の弱い一般人みたいな言い訳をしてどうするのか。
そう考えると、この産経のどうしようもない「スクープ」にも、ふたつだけ良い点があった。それは、韓国側が歩み寄りを見せているにもかかわらず、安倍政権がいまだに右派やネトウヨの顔色を伺って強硬姿勢をアピールしているという愚かさ。そして、安倍首相の側近や外務省が「SNSでも相手の許可を得るのが常識」「エチケット違反」みたいなイチャモンをつけるしか能がないというバカっぷり。そのふたつを、産経サンは赤裸々に語ってくれたわけだ。
さすがは“安倍政権御用紙”と呼ばれるだけのことはある。市民からはともかく、安倍首相からの信頼は厚い。だからこそ逆説的に“親分”の愚かさをスッパ抜ける。ありがとう、産経新聞。これからもどんどん「スクープ」を飛ばしてもらいたい。
(編集部)
最終更新:2019.11.09 01:39