これが一面トップ…(産経新聞19年11月8日朝刊より)
は? なんじゃこりゃ──。“安倍政権御用機関紙”こと産経新聞が、昨日8日の朝刊1面トップで思わず目を疑う「スクープ」を飛ばしている。見出しはこうだ。
「日韓首脳対話 無断で撮影」
「周到準備の韓国 不意打ち」
周知の通り、今月4日夜、タイで開かれたASEANプラス3の首脳会議に先立ち、安倍首相と韓国の文在寅大統領が控え室10分間ほど「会談」を行なった。日韓首脳が直接対話するのは昨年9月ニューヨークでの首脳会談以来約1年ぶりで、両国のマスコミも大きく報じたわけだが、産経は、そのときに韓国側が撮影し公開した写真が「無断撮影」だったと、鬼の首をとったように報じているのである。
言わずもがな安倍首相と文大統領は公人中の公人である。産経サンはなに寝言ほざいてんの?って感じだが、肝心の中身もそうとうヒドい。記事は、例の写真を韓国側が日本側に無断で撮影、公開していたことがわかったとした上で、こう続く。
〈首脳間の非公式のやりとりに関する写真撮影やその公表には、明文化されたルールがあるわけではない。ただ、外務省幹部は「個人のSNS(会員制交流サイト)でも、誰かと映った写真をアップするときは、相手の許可を得るのが常識だ」と話し、日本側は韓国の行為を「エチケット違反」(外交筋)とみなしている。〉
首脳会談の写真を、「SNSでも相手の許可を得るのが常識」とか「エチケット違反」って、一般人に写真をとられてブチキレる三流芸能人か。
だいたい、撮影されていることは安倍首相自身が知らなかったはずがないし、会談には両国政府のスタッフも同席していた。もし、写真を公開されるのが嫌なら、日本政府のスタッフが撮影を止めれば良かっただけの話ではないか。それを写真が公開された後になって「無断撮影」って、失笑を通り越して、本気でその頭は大丈夫なのかと心配になってくる。
しかも、当の産経新聞自身、4日の「10分間会談」写真をバーンと掲載しているのだが、コレ、実は韓国大統領府が通信社に提供したもの。つまり、産経サンは「韓国は無断で写真を撮りやがって!けしからん!」と息巻いているにもかかわらず、その青瓦台提供の写真を堂々と使っちゃっているのだ。
もはや一周して「アッパレ!」と言いたくなってくる感すらあるが、皮肉が通じない可能性があるので、あらためてそのヤバさを指摘しておこう。
そもそも安倍首相と文大統領が10分間の対話をしたのは事実であり、その写真を韓国政府が公表することの何が悪いのか。報道陣を中に入れない「非公式」の対話だったからこそ、政府関係者が写真を撮影したわけで、むしろ、まともな報道機関ならマスコミの撮影を許可しなかった両国政府の対応、あるいは対話を公開していない日本政府を批判すべきだ。
ところが、産経は「韓国側が無断で撮影してきた」なる“韓国ディス”にすり替え、一面トップに掲載してしまったのである。産経新聞のHPを見ると、企業理念として、報道機関としての社会的使命を果たすべく云々と一丁前に書かれているが、清々しく“安倍サマを支えるネトウヨのためのサークル紙です”と明言したほうがいい。