『羽鳥慎一モーニングショー』に出演した野々村直通元監督(8月22日放送回より)
第101回全国高校野球選手権大会の決勝・履正社高校(大阪)と星稜高校(石川)の試合が行われ、履正社の優勝で幕を閉じた。
今回の甲子園でも、球数制限や酷暑の問題など、出場する選手たちの健康を考えるうえで重要な議論が複数噴出したが、そんななか、春夏合計で9回甲子園に出場した経験のある元野球部監督による、呆れ果てるほど時代錯誤な発言が話題となった。
それは、決勝戦を前に今回の甲子園を振り返る特集を企画した8月22日放送『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)に出演した、開星高校(島根県)野球部元監督の野々村直通氏だ。
野々村氏といえば、島根県の開星高校の野球監督だった2010年の甲子園で、初戦で21世紀枠の高校に負けた試合後のインタビューで「21世紀枠に負けたのは末代までの恥。切腹して死にたい」と発言し、問題になった人物。そんな人物にいま高校野球について解説させるとは驚きだが、この野々村氏、なんと吉本興業所属らしい。
それはともかく、問題は今回の発言内容だ。番組では、甲子園球場の過酷な暑さのなかで試合を強行させることに批判の声が起き、甲子園球場をドーム化させる案なども浮上していることが紹介されたのだが、野々村氏はこのように言い放ったのだ。
「いや、もう、ロマンないね。いまの時代の暑い炎天下のことを解決するには、(甲子園)球場を(屋根で)覆ってしまうというのはひとつの策ですよ。だけど、太陽のもとでやるのが僕のイメージ」
「暑いなか耐えて頑張っている高校球児を見たがっている人もいる。そこに感動する人もいる。暑さに耐えるのも教育なんだ」
これにはコメンテーターの玉川徹や高木美保も失笑。しかし、野々村氏はそんな空気はお構いなく、こんな持論を展開するのだった。
「なにもかもがね、エアコンの効いた、空調のきいたハウスのなかでやるような教育をしちゃダメなんです。だから、『ここまでは限界、でも、もうちょっとやれる』っていうのは、そのために指導者、責任者がいるわけで、そういう判断力のある指導者がこれから出てこないと(いけない)ということですよ」
そもそも、「自分の能力の限界を超える」練習と、酷暑のなか炎天下で理不尽な試合や練習をすることとは何の関係もないのに、それを平気で一緒くたにしてしまうこの無自覚ぶり。しかも、野々村氏は指導者に判断力さえあれば、大丈夫というのだが、自分の身体でさえコントロールをするのは難しいのに、何十人もいる野球部の生徒についてそんな正確な判断が下せるわけがない。そんなことができないから、日本全国で部活動中の熱中症の事故が相次いでいるのではないか。野々村氏がこんなことを言えるのは、現場にいたのが日本の夏の気候がここまで厳しくなる前だったこと(野々村氏は2011年の甲子園出場を最後に監督を引退している)に加え、ただ運良く事故が起きなかったから、それだけのことだ。
しかし、野々村氏はそんなことはお構いなしに、自分の考え方を「教育論」として滔々と語り始める。
「いまは逆にね、そこをね、あまりにも優しくし過ぎていると思いますよ。僕は。倒れさすんじゃないですよ。『倒れる気でやれ』と。それだけ高校野球に没頭しなさいということは、この時期の教育で絶対に必要。それをやらなくなって温室育ちするから、非常に弱い日本になっている」