安倍晋三Twitterより
金融庁の「年金に頼るな、自分で2000万円貯めておけ」報告書への国民の怒りがおさまらない。それはそうだろう。批判殺到で最終報告書からは削除されたが、この報告書には途中まで「年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい」「年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」などという記述があったのだ。
さんざん「100年安心」などとインチキをふりまいて高い保険金を徴収しながら、今頃になって、年金は下がるから、自分で2000万円貯めておけとは、まるで詐欺ではないか。
しかも、これ、たんに金融庁が、国民に資産運用をPRするために口を滑らせたという話ではなかった。リテラが先日の記事(https://lite-ra.com/2019/06/post-4748.html
)で、金融庁の担当者を直撃したところ、なんと、この報告書を作成していた金融審議会「市場ワーキング・グループ」に、厚生労働省の役人が出席していたのだ。
さらに、リテラは今回、この厚労省の役人が出席していたという4月12日のワーキンググループの議事録を発見したのだが、その役人とは、厚生労働省年金局企業年金・個人年金課の吉田課長だった。吉田課長は、将来の年金削減や給付年齢引き上げを示唆したうえ、金融庁に丸乗りして、自らも「資産運用」の必要性を説いていたのだ。
議事録によると、厚労省年金局の吉田課長は「私的年金の現状と課題について説明する」として、約20分にわたって発言している。そもそも、金融庁の報告書は、公的年金をあてにせず、自分で「つみたてNISA」や私的年金「iDeCo」などを使って資産運用しろ、というものだが、私的年金については、厚労省も猛プッシュしていたらしい。
しかも、吉田課長はこの説明で、年金についていきなり、こう明言する。
「22ページ、高齢期における所得状況ですが、高齢者世帯の収入の66%を公的年金が占めております。この公的年金の給付につきましては、マクロ経済スライドにより、中長期的な水準の調整が見込まれているのはご案内のとおりで、老後の所得確保における私的年金の重要性が増すものと考えております。」
吉田課長は「調整」などという表現を使っているが、これはもちろん「中長期的に年金給付が下がる」という意味だ。
実際、吉田課長が「22ページ」と指し示した厚労省提出の資料には、〈スライドの自動調整と所得代替率〉と題されたグラフが掲載されているが、そのことがはっきり指し示されていた。縦軸が「所得代替率」、横軸が「時間」のこのグラフには、かなりの急角度の右肩下がりの直線が引かれ、その右肩下がり直線の途中に〈給付水準の調整により所得代替率が低下〉、終点に〈概ね100年後に十分な積立金を保有できると判断される段階でスライドの調整終了〉という解説が書かれていた。
「厚労省年金局が金融庁に提出した資料より」
これは、2004年の年金改革で導入された「マクロ経済スライド」による年金給付削減を表したもので、同様のグラフは厚労省のHPにも載っていたが、金融庁に提出されたこの資料に載せられたグラフのほうが明らかに所得代替率の下がり幅が大きく、調整期間が長い。具体的な数値は書き込まれていないが、厚労省がいま公表している見通しよりもさらに、長期的で大幅な給付削減を想定していることの表れだろう。