年金危機の裏で厚労省が職員の福利厚生で資産運用をサポート
ようするに、厚労省は、年金の支給開始時期を繰り下げる高齢者を増やすために、私的年金を勧めようというのだ。
とくに気になるのは「高齢期の就労期間の延伸を年金制度上も反映する」「より柔軟な受給のあり方について公的年金サイドで検討」というセリフだ。オブラートに包んでいるが、これは現行65歳からの支給開始を、任意でなく完全に70歳、75歳に引き上げることを検討しているということではないのか。
年金制度をさんざん食い物にして、こんな状況に追い込んでおきながら、さらなる制度改悪を示唆し、私的年金という自助努力を求める−−−−。その無責任ぶりには、開いた口がふさがらないが、さらに吉田年金局課長は、金融庁の方針に丸乗り。私的年金だけでなく、資産運用の重要性まで語っていた。
「いずれにしましても、長期化する高齢期に就労、公的年金、私的年金の3つを組み合わせることが大事になりますし、この3つのほかにも、ここ市場ワーキング・グループで検討されております金融資産の充実、また、不動産資産の流動化などを組み合わせていくことも大事な視点ではないかと考えております。」
「さまざまなライフイベントに対応するため、iDeCo、またNISAがすみ分け、役割分担をしながら、両者がともに拡大・発展していくことが必要ではないかと考えております。」
あげく、最後に飛び出したのは、こんなセリフだった。
「最後になりますが、(略)厚生労働省における職員の福利厚生の一環として、我々、iDeCoのみならず、つみたてNISAにつきましても職員が加入しやすいようサポートを行っております。」
これって、つまり、年金がヤバイから、厚労省では率先して職員の資産運用のサポートをしているということではないのか。
いずれにしても、この議事録に掲載された厚労省年金課長の発言を見れば、国民に「年金に頼るな、自分で2000万円貯めておけ」と説教する今回の報告書が、たんに金融庁の資産運用活性化PRでないことがよくわかるだろう。明らかに、政府=安倍政権全体の意思として、年金をさらに削減するため、国民を自助努力の方向に誘導しようとしているのだ。
安倍政権は年金の悪化を国民から隠すため、公的年金の見通しを示す「財政検証」の結果公表を参院選後に先延ばしにしたが、裏では、こうした年金改悪の計画は着々と進んでいるということだろう。
(編集部)
最終更新:2019.06.10 07:36