「カツカツでも貯蓄を」消費を冷え込ませる危険性に無自覚な金融庁
――アメリカの場合は、富裕層の伸び率がすごいだけでしょう。それともうひとつ、カツカツのなかでも貯蓄や投資に回せ、個人で貯めていかないといけないという政策は、マクロ経済政策としてみても逆行しているとしか思えません。将来不安が消費の冷え込みを招き、それが日本経済の成長の最大の妨げになっているのに、その消費をさらに冷え込ませるよう、使うな、貯めろといっているわけですから。
たしかに若い20代、30代の方で、社会保障制度に不安をもっているという声はデータとしてありますし、いま使うところを節約して、消費を落として将来に備えようという動きもよく指摘されているところだと思います。ただ、ある種ですね、これは自身の資産がどれくらい足りないのか、逆に足りるのかという見通しが、やっぱりわからない、見えないというところもきっと影響しているかと思います。その意味で、自身の収入や資産を将来に向けて見える化されることで、じゃあ今使っていい金額はどれくらいなんだというところが見えてくるといことから、それが逆に消費に使ってもいい金額、っていうふうにもつながってくるかとも思います。ので、そういった道で、ある種、消費を、使うべきところで使うところの道も、いま申し上げたようなルートからあり得るんじゃないかなというふうには思っています。
――いや、消費を妨げることになるのは明らかですよ。
その意味では、お答えになってない部分はあるかと思うんですけども。あくまで消費というところは、経済全体で見ると活性化させることが非常に重要だとは思います。ただ、いまの現状としては、消費を手控えるという動きもあるので、そういった意味ではやはり将来の資産というところを、見える化というかそこに備えて使うべきところを使うというところは、考えられる一つの手段であってもいいのではないかと思っています。
――本来、景気を良くするためには、社会保障を充実させて、国民が安心して収入を消費に回せるようにするべきで、考え方は逆だと思いますが。いずれにしても、今回の問題がここまで批判されているのは、年金がいちばん安心と言われて、納め続けていたのに、今更それが足りないから貯蓄や投資をしておけっていう無責任な話を政府が言い出したからなんです。しかも、その投資は自己責任でって。じゃあ、年金って何だったんだというのが、みなさんが批判しているところじゃないかと思うんですが。
その意味で言うと、とくに年金がなくなるというわけでも当然ないんで。
――ゼロにはならないにしても、下がることは間違いないわけですよね。報告書に対して、批判の声が上がっているのは、ご存知だと思いますが、撤回や削除する予定はありますか。
我々も事務局として作業だとか、座長のご意向に沿いながら、作業とかいろいろさせてもらっていますけど、今回の報告書は、ワーキングでの議論、具体的に言うと委員会で議論いただいたものを、まとめさせていただいている。委員に確認とって了承取れればということになりますので、いまはまだ案ということで、最終報告書には至っていない。次回6月3日で取りまとめという指示をいただいておりますので、それに向けて作業しているところです。現時点では、委員においていろいろ意見いただいていますが、そのなかにとくに撤回をするという意見が出ているわけではありませんので、事務局としては撤回を予定しているところではございません。