自助努力、自己責任を押し付ける金融庁はこんな啓蒙パンフも
金融庁が先日公表した報告書をめぐり、「年金はなんだったんだ」「年金返せ」「年金払え」とSNSで怒りの声が巻き起こっている。「年金返せデモ」の動きも出てきた。
発端となったのは、5月22日付けで金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」がまとめた「「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)」。先日本サイトでも詳しく報じたが、この報告書は、老後の生活を営んでいくための「資産寿命」をいかに延ばすかをまとめたものだが、なんとそこでは、「年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい」「年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」とし、「老後は年金だけに頼らず自助努力しろ」「2000万円貯めろ」と呼びかける代物だった。
そもそも年金制度の不備や破綻の危険性は長く指摘されてきたことだが、政府は「年金100年安心プラン」「公的年金は絶対大丈夫!」などと喧伝してきた。それがここに来て、公助を放棄し自助を呼びかける内容を、政府が公表したのだから、批判が殺到するのは当然だろう。
本サイトは、あらためて金融庁にも電話で直撃取材。「年金が不十分であると政府で認めるのか」「年金100年安心は嘘だったのか」「投資する資産のない者はどうすればいいのか」「投資で損が出た場合の責任は?」などの疑問をぶつけた。
担当者の部署や氏名を公表せず、「金融庁」としての回答としてほしいとのことだった。
――報告書は、政府として「年金制度があてにならないから、老後は自助で」ということを宣言するものです。無責任すぎませんか。
こちらのメッセージとして出しているところは、とくに、公助、年金に代わって自助を、と申し上げているつもりはなくてですね。年金というのが、老後の生活収入の柱ということは間違いないと思っているんですけれども。それにプラスアルファをして、人によっては、自助というところのなかに資産形成という手もあっていいんじゃないかとそういう趣旨でございます。なので、公的年金、公助に代えて自助、というそういう趣旨で文書がなっているわけではないと思います。
――報告書を読むと、プラスアルファということではなく、年金制度が不十分であるということを政府として認めているとしか思えないんですが。
年金制度に不備があることを、この中で言及しているわけではありません。ワーキングのなかで、とくに公的年金制度そのものについて議論したということでもありません。
――でも、報告書には「年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」とはっきり書いてあります。
なんで年金制度の話に触れているかというと、やはり長寿化、もともとのこの報告書の問題意識にも通じるんですけれども、日本人の長寿化が進んでいるということを考えると、自らが満足する生活水準を達成するためには、老後の収入が足りないこともありうる。寿命がこれほどまでに長寿化する前は、たとえば5万円足りないんだったら10年で500万円だったのが、これが2、30年のびてくると、文書のなかでも示している通り、1000万円、2000万円という形になってきますので、その意味で、必要となるお金というところは長寿化に応じて、必要になってくると。