無理難題を押し付け「飛び降りろ」「俺の奴隷になれ」と暴言連発
あるとき、某企業からの値下げ要求が厳しさを増し、どうしても値下げをしないと取引自体を切られる事態となりかねない状況が生じた。ところが、社長は、逆に「製品をセットにして値上げする交渉をしろ」とX氏に命じた。またもや難題をぶつけられたX氏は、それでも一部を値上げするような要請を某企業に対して行った。
帰社したX氏を、社長が社長室に呼び出した。
社長「値上げの資料を提出したのか」
X氏「一部ですが提出しました」
社長「なに、一部? ばかやろう死んじゃえ、飛び降りて死ね、俺は全部の値上げをしろと言ったんだぞ! 死ね、早く。ばかやろう」
怒りの形相となった社長は、自分の顔をX氏の顔に近づけて怒鳴りつけたのである。
そして、さらに、「お前は俺の奴隷になれ、完璧に追い詰めてやる、絶対に辞めさせねえからな、逃げたって無駄だからな、ドアーを開けたらどうするかわかってんだろう、足を出して閉められねえようにするんだ、俺は何回もやっているんだ」と脅すのである。
あまりの剣幕にX氏はその場から動けなくなり、頭の中では「本当に飛び降りて死んだら楽になれる」と思ったのだという。
その後、値上げがうまくいくはずもなく、いらだった社長は、X氏に当たり散らした。そして、「これからはお前を徹底的に追い詰めて監視してやるからな、1日3回俺のところへ来い、いいな」と述べ、実際にX氏を1日に3回呼びつけて怒鳴り散らした。怒鳴る中で、社長は、「辞めてもいいよ、ただ300万円払えよ」と述べ、実際にはX氏が辞められないように追い詰めていった。
こうしたことが続いたため、X氏は食欲減退、手のしびれ、動悸など、体調に異変が生じ始めた。そして、ついに、ある朝、吐き気と倦怠感で起き上がることができなくなってしまった。ようやく、会社に休暇の電話をしたものの、社長のことが頭から離れず、今にでも社長が家に来るのではないかと思うようになり、怖くて家にいられず妻の実家に行き、そこで寝泊まりするほどであった。
その後、X氏は精神科で診察を受け、「反応性うつ病」と診断され、その診断書と欠勤届を会社にFAXで提出した。